2005 Fiscal Year Annual Research Report
9員環エンジイン抗腫瘍性抗生物質の全合成と分子認識機構の解明
Project/Area Number |
17710176
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小林 正治 大阪府立大学, 理学系研究科, 助手 (30374903)
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Keywords | ネオカルジノスタチン / クロモフォア / 9員環エンジイン / 全合成 / 抗生物質 / アグリコン / スマンクス / 分子認識 |
Research Abstract |
スマンクスとして肝癌治療に使用されているネオカルジノスタチンは、活性本体である低分子クロモフォアとアミノ酸113残基からなるアポタンパク質との1対1複合体である。クロモフォアは高度に歪んだ9員環エポキシエンジイン構造を持つため、非常に反応性に富んでおり、光・酸素・求核剤などが引き金となって、分子内ビラジカルを経由して直ちに分解する。本研究では、活性クロモフォアの生体高分子に対する詳細な分子認識機構の解明を目的とし、その化学的全合成を検討した。 ネオカルジノスタチンクロモフォアは、構造的に3つのフラグメントに分けられる。すなわち、高度に歪んだエポキシビシクロ[7.3.0]ドデカジエンジインコア、ナフタレン部、2-アミノ糖部の3成分の連結により、収束的に合成できると考えた。9員環構築後の分子の不安定性と導入するアミノ糖の多様性を視野に入れ、最終工程でアグリコンにアミノ糖を直接導入する合成ルートを計画した。 D-グルコピラノシドを出発原料として、5員環部を合成した。分子内メタセシス反応を経由することにより、従来の手法よりも短時間でのフラグメントの大量供給が可能となった。効率的にC2-C5部とC6-C8部を導入後、セリウムアセチルドの分子内求核付加反応により立体選択的に9員環を構築した。環化効率が環化前駆体の相対立体化学に大きく依存することを見出した。C4,5-エポキシド、C13,14-カルボネート、C11-ナフトエートを順次構築した後、9位3級アルコールの脱水反応により、C8-C9二重結合を構築した。マーチン試薬を用いることにより、定量的に脱水反応が進行することを見出した。水酸基の保護基は酸性条件で除去することができ、純粋なアグリコンを得ることに成功した。本研究はネオカルジノスタチンクロモフォアそのものの合成に寄与するばかりでなく、不安定で複雑な分子一般の合成手法の開発に広く貢献するものである。
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Research Products
(1 results)