2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー・バゴー山地におけるチーク林の生態環境の履歴
Project/Area Number |
17710199
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 玲治 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手 (60378825)
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Keywords | チーク / タウンヤ造林 / 土壌有機物 / 農作物間作 / 伐採・火入れ / 生態環境 / ミャンマー |
Research Abstract |
チーク林の生態環境の履歴の把握のため、今年度はタウンヤによるチークの再造林に着目した調査を行った。バゴー山地ポツコン郡における聞き取り調査から、タウンヤ農民の半数以上がチーク皆伐跡地は農作物間作に適さないと考えており、チーク林の土壌が悪いこと、火入れ用の燃材が確保できないことがその主な理由であることが分かった。土壌分析により、チーク皆伐跡地で農作物間作を行った造林地では、二次林の伐採・火入れ後に農作物間作を行った造林地に比べて土壌炭素量が有意に低いことが分かったが、この結果はチーク林の土壌が悪いとする農民の認識と一致する。一方、チーク皆伐跡地では約半数の世帯が燃材不足により十分な火入れができなかったものの、タケ類の再生が旺盛な場合は良好な火入れが可能であった。逆に、二次林をひらいた場所でも、火入れ時の風向きや野火による燃材の焼失等の影響で火入れが不十分であった場合もあり、伐採前の植生と火入れの関連は明確でなかった。また、土壌特性値と間作物の収量の間には明瞭な関連は認められなかった。間作物の収量は、降雨のパターン、動物の食害や虫害、火入れの状況等、様々な条件に左右されるため、土壌条件は間作物の収量を規定する一因子に過ぎない。本調査地では、土壌が良好で十分な火入れが見込める二次林よりも、道路からのアクセスが容易なチーク皆伐跡地に最も多くのタウンヤ農民が集まっており、チーク皆伐跡地に対する認識と実際の土地選択は必ずしも一致しなかった。チーク皆伐跡地は二次林に比べ、土壌環境や燃材確保の観点からは条件は悪いものの、それが間作物の収量やタウンヤ農民の土地選択に決定的な影響を与えてはいなかった。チーク皆伐後に早期の再生が期待されるタケ類の回復を待ち、チークの枝条を可能な限り火入れに利用すれば、チーク皆伐跡地での再造林に伴う問題点を大きく軽減することが可能であろう。
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Research Products
(3 results)