2005 Fiscal Year Annual Research Report
意識および無意識のおける言語の役割とその射程に関する、ラカン理論の哲学的考察
Project/Area Number |
17720005
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
川崎 惣一 城西国際大学, 福祉総合学部, 講師 (30364988)
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Keywords | 精神分析 / 無意識 / ラカン |
Research Abstract |
本年度においては、申請した研究計画にしたがい、ラカン理論におけるシニフィアンの役割と意義について考察することに取り組んだ。具体的には、フロイト及びラカンの諸テキスト、さらに関連文献を収集し読解することを中心に、研究を行った。とりわけ、ラカンのセミネール第五巻『無意識の形成物』の読解と、フロイトの『機知と、機知の無意識との関係』の読解が研究の中心となった。 これにより明らかになったのは、フロイト=ラカンの理論において、シニフィアンの連鎖に切れ目を入れること、つまり、さまざまなシニフィアンの分節化、これによる意味の生成が無意識の形成物を生み出す契機となっているのだが、その仕組みである。ラカンはこのことを独自の「欲望のグラフ」において図示している。とはいえ、このグラフをもとに無意識の欲望および要求のあり方について具体的に検討していくなかで、まだまだ十分に解明できないところも残った。たとえばこのグラフを父-母-子のエディプス的三角形と照らし合わせたときどうなるのか、さらに、そのとき「大文字の他者」の欲望のあり方についてどう理解すべきなのか等については、ラカンの他のさまざまなテキストともあわせて、いっそう詳細な検討が必要であることが分かった。 本年度においては、以上のような研究の成果を、研究論文という具体的な形で発表することはできなかった。間接的な成果としては、ラカンのセミネール第五巻『無意識の形成物』の翻訳書(共訳)を本年度刊行した。 来年度では、本年度の研究成果を踏まえつつ、申請した研究計画に沿ってフロイトおよびラカンの諸テキストのより精緻な読み直しと再解釈を行いながら、研究課題である「意識および無意識における言語の役割とその射程に関する、ラカン理論の哲学的考察」をめぐって、具体的な成果を出していく予定である。
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