2005 Fiscal Year Annual Research Report
易緯の新研究-漢代易学における緯書思想の展開と行方-
Project/Area Number |
17720007
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辛 賢 大阪大学, 大学院・文学研究科, 講師 (70379220)
|
Keywords | 漢代 / 中国哲学 / 易学 / 緯書 / 易緯 / 術数 / 象数易 / 緯学 |
Research Abstract |
平成十七年度では、易緯の理論的分析及び緯書の研究状況に関する調査・検討を行った。 まず、易緯のなかでも重要資料として認められる『乾鑿度』『稽覧図』を取り上げ、「主歳法」及び「世軌法」の実相について検討を行った。その結果、「主歳法」「世軌法」における王朝交替の時間論が、『京氏易伝』における八宮世応構造の時間的メカニズムに直結するものであることが明らかになった。この研究成果については、国際シンポジウム「易と術数研究の現段階」(2005.12.11於東京大学)において報告を行った。報告内容(題名「易緯における世軌と『京氏易伝』」)は、後日、刊行予定である。 また、宋末の兪〓著『周易参同契発揮』を取り上げ、検討を行った。『周易参同契』に関する兪〓の理解は、易道と丹道の統一的把握が根幹をなしていること、それはまた易学の総体化といった宋代易学の学問的潮流に連なるものであったことを指摘した。この結果は「兪〓覚書」(広域文化表現論講座共同研究『テクストの読解と伝承』)の題名で公刊予定である。 この他、緯書の研究史に関する検討を行った。まず、中国大陸における緯書の研究状況は、一九八〇年代以降、本格的な研究が進められ、近年では、様々な角度から実証的な研究成果が発表されている。またこれに並行して、「儒教」に対する本質的な理解をめぐる新たな視座が中国人研究者の間で展開しはじめていることも見受けられる。一方、韓国では緯書そのものに関する研究はあまり見られないが、経学における術数的要素に注目した研究が行われている。たとえば、『春秋』における編年体の時間叙述の書法に見られる歴史観や漢代の易学の技法体系に関する理論分析など、手堅い文献考証にもとづく興味深い論考が発表されている。これらの研究史に関する検討の結果については、第五〇回国際東方学者会議(東京会議、2005.5.20)シンポジウム(VI)「両漢の儒教と政治権力」に対論者として参加した際、コメントの一部として取り上げた。のち、『両漢の儒教と政治権力』(汲古書院、2005)において「王報告へのコメント」(pp.11〜19)「韓国における近十年間の両漢研究」(pp.287〜302)として掲載された。
|