2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水溜 真由美 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00344531)
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Keywords | 思想史 / 戦後日本 / 社会運動 / ジェンダー |
Research Abstract |
1.50年代後半におけるサークル運動の展開とサークル運動を取り巻く言説を検討した。その結果、この時期に50年代前半まで既成組織に従属する傾向が強かったサークル運動が自律化の志向性を強め、新しい賭け金を獲得しつつあったことが明らかになった。また50年代後半には、資本主義の高度化と大衆社会論の展開と連動して「小集団」をめぐる議論が活発に行われていたこと、小集団論とサークル論とが密接な関わりを持っていたことが明らかになった。 2.ウーマン・リブを先取りしたとされる森崎和江のフェミニズム思想と『サークル村』の運動との関係を検討した。その結果、『交流』の理念を掲げ、分断されている労働者・民衆を相互に架橋することを目標にした『サークル村』の運動と、『被害者』としての閉鎖的な連帯関係を批判し「女性」が一枚岩的な存在でないことを強調した森崎のフェミニズムとの共通点が明らかになった。他方で森崎が主宰し『無名通信』の運動について検討することにより、『サークル村』の家父長制的性格が森崎のフェミニズムの動機づけになった点も明らかになった。 3.『サークル村』のメンバーであった石牟礼道子の「共同体」をめぐる思想を検討した。石牟礼は、不知海沿岸の地域共同体の伝統的性格を強調し、この地域共同体に同一化する立場から「都市」や「文明」を批判した。他方で、『サークル村』が地域社会に向けた批判的な視点を石牟礼も共有していたこと、石牟礼が「共同体」の存立は近代化・産業化と無関係ではなく、共同体の内部に様々な亀裂が含まれているとする視点を提起していることが明らかになった。
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