2006 Fiscal Year Annual Research Report
<皇国史観>を中心とする国体イデオロギー研究を通じた、戦時期思想史像の再検討
Project/Area Number |
17720014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
昆野 伸幸 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (00374869)
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Keywords | 皇国史観 / 国体論 / 平泉澄 / 宮沢賢治 / 田中智学 |
Research Abstract |
近代日本における国体論を歴史的に位置付けるためには、政治家、文部官僚、知識人の思想を検討するだけではなく、宗教家、文学者などの国体観に注目する必要がある。というのも、抽象的な議論に傾きがちな知識人の思想よりも、宗教や文学を通じた国体論の方が、当時の国民にとってより身近で理解しやすいものであったと考えられるからである。 このような意図から、前年度に引き続き、東京帝国大学教授平泉澄の思想を検討するとともに、新たに近代日本を代表する日蓮主義者である田中智学と彼に影響を受けた著名な作家宮沢賢治の思想を分析した。 前者については、現在における平泉澄研究の第一人者たる若井敏明氏の優れた著書『平泉澄』(ミラルヴァ書房、2006年)の書評という形式をとりながら、私見の開陳を試みた。拙稿では、平泉は実証的な態度と教化的な態度を区別していた訳ではなく、ふたつの態度を密接不可分なものとして内在化させていたことを強調した。また政治思想的観点から、平泉の思想はいわゆる陸軍皇道派の思想とは質的に異なるものであること、そしてその相違こそが二・二六事件以後の彼をしてますます陸軍内に影響力を強めさせたことになったことを指摘した。 後者では、従来の理解とは異なり、宮沢賢治が強烈なナショナリストであること、及び彼が田中智学の国体論から大きな影響を受けていることを指摘した。ただし、賢二は一貫してナショナリストだったが、智学の国柱会に入会する以前と後では質的に変化が認められる。つまり、入会前にはかなり素朴な天皇中心主義に止まっているのに対し、入会後にはあくまで日蓮・法華経の権威を絶対的なものとし、この下部に天皇を位置付けているのである。
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Research Products
(3 results)