2005 Fiscal Year Annual Research Report
未刊注釈書を中心とした近世中〜後期における徒然草受容史の研究
Project/Area Number |
17720034
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
川平 敏文 熊本県立大学, 文学部, 助教授 (60336972)
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Keywords | 徒然草 / 松平定信 / 田安宗武 / 伝授 / 講釈 / 注釈 |
Research Abstract |
第一に、伊賀市立上野図書館に赴き、近世中期に成立した未刊徒然草注釈書『徒然草隠解』(井村信成編)を読解する際の鍵になると思われる、兼好俗伝関連の古典籍を調査した。また、大阪府立中之島図書館に赴き、井村信成関係の資料、近世前期刊行の徒然草注釈書諸本、および当時の和学関連の古典籍を調査した。 第二に、近世中期の未刊注釈書である『徒然草評論』についての考察を、学術誌に発表した。該書は徳川家御三卿の一つ田安家の始祖、田安宗武の著である。宗武の息に、後に幕府老中となって寛政の改革を断行した松平定信がいるが、彼の随筆『花月草紙』や日記『花月日記』を見れば、その徒然草受容の在り方に国学的な傾向が見て取れる。<定信と国学>という視点はこれまであまり具体的には指摘されていないが、それを宗武との繋がりにおいて考証した。 第三に、徒然草の伝授、いわゆる三ヶの大事についての考察を、学術誌に発表した。三ヶの大事に関する考説は、その伝授という性質からしても未刊本として流通する傾向が強く、未刊徒然草注釈書とも関連が深い。ここでは「しろうるり」という言葉に関する秘説が、近世前期から中期にかけてどのような内容として語り継がれ、またその存在意義がどのように認識されてきたかについて考察した。 第四に、近世前期〜中期の未刊注釈書『徒然草師伝抄』(岐阜県富加町松井家資料館蔵)の翻字原稿を、学生アルバイトを雇って作成した。該書は松永貞徳の高弟宮川松堅の弟子筋にあたる、安田迂庵なる人物が執筆した物であるが、彼にはまた徒然草講釈の要領を記した『徒然草講莚要集』の著もある。近世前期から中期の徒然草受容史は、講釈という営為と密接な関わりをもって展開すると考えられるが、本書はその貴重な資料となるであろう。
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