2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本漢籍の本文形成に関する研究-五山版・古活字版を中心に-
Project/Area Number |
17720035
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
住吉 朋彦 慶應義塾大学, 附属研究所斯道文庫, 専任講師 (80327668)
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Keywords | 書誌学 / 版本学 / 日本漢学 / 五山版 / 古活字版 / 和刻本 / 氏族大全 / 韻府群玉 |
Research Abstract |
本年度は資料調査のため内外の諸文庫に出張し、中世以来わが国で広く浸透した漢籍である『古今韻会挙要』『韻府群玉』『氏族大全』『翰墨全書』『聯珠詩格』の諸版本につき書誌採録を実施した。その成果に基づき、本文研究上重要と思われる版本を選んで、尊経閣文庫蔵『増続会通韻府群玉』(朝鮮乙亥字初刊本)、早稲田大学図書館蔵『新編排韻増広事類氏族大全』([元]刊本)、天理大学附属天理図書館『同』(明永楽17年刊本)の書影を写真によって入手し、旧来の収集資料と併せ、版本精査と本文校勘の作業を行なった。その結果、特に『氏族大全』について諸版の関係を確立し、[元]刊本から元末明初諸刊本、本邦[南北朝]刊本(五山版)が、[南北朝]刊本から元和5年刊本(古活字版)が派生、元和5年本から[江戸前期]刊本(和刻本)が生じたという関係にあり[南北朝]刊本は[元]刊本に無批判に従い、本文の劣化を止めることができなかったこと、元和5年刊本は劣化した[南北朝]刊本を土台にしながら独自に校改するところもあったが、それには自ずと限界があったこと、[江戸前期]刊本は元和5年刊本を包含しつつ、中国で明末に成った増編本の影響を容れ、附訓を成した点に特色が見られることを明らかにした。これは、従来知られていなかった五山版の底本の一を版種レヴェルで突き止め、また明版の翻刻と思われていた和刻本につき、古活字版を主に明版を折衷した本文であることを把握したもので、日本漢籍の本文形成の実態を示す一例である。また『韻府群玉』について、日本の古活字版の底本となった増続会通朝鮮乙亥字刊本に、初刊・再刊の別ありと既に明らかにしていたが、今まで全容の知られなかった初刊本の、ほぼ完全な形である尊経閣文庫蔵本を発見し、残欠の諸本がみな初刊・再刊の2種に分類され伝本の整理が進捗し、古活字版を含めた本文校勘を、全巻に亘って行なうことが可能となった。その他、『古今韻会挙要』『翰墨全書』『聯珠詩格』の元明版、朝鮮版、和刻本について、それぞれ多数の伝本を著録し、版種の広がりとその大まかな関係につき見通しを持つことができた。
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