2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720036
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 ふみ子 Hosei University, キャリアデザイン学部, 准教授 (00386335)
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Keywords | 江戸狂歌 / 大田南畝 / 浮世絵 / 国際研究者交換 / 米国 / スイス |
Research Abstract |
今年度は、米国のボストン美術館およびハーバード大学サックラー美術館を中心に調査を行った。そこで寛政-享和期を中心に新発見の大型狂歌摺物をも数点見出し得た。これまでの調査で把握できた大型摺物83点を年代順に一覧にし、所在と制作連・側、絵師など狂歌師・狂歌連の活動把握に重要な情報を整理した(「江戸狂歌連の大型摺物一覧(未定稿)」)。これは、狂歌研究者のみならず、それと深く関わる江戸後期の文芸・出版研究者、および美術史研究者が狂歌摺物の所在を把握し、その狂歌壇的位置づけを知る手がかりとなろう。 また私家版として制作過程が注目されない狂歌摺物であるが、その制作自体が、職業的狂歌判者にとっては営利的な行為であり、また判者が自らを権威付け、そのプロモーションに利用するという商業的な側面があることを見逃してはならない。そういった狂歌摺物の商業的側面についての研究を行い、2007年8月にチューリッヒを拠点とする国際的な摺物研究プロジェクトの研究会で発表を行った。その成果の公刊も確定している('Surimono Authorizing Masters of Kyoka')。またその意味で極端な事例の研究として山陽堂(芝の屋山陽)の伝記研究を行った。山陽堂の摺物の制作とその背景を論じることによって、近世後期の江戸狂歌の典型的な性質を描き出したと言える(「狂歌師の虚飾-山陽堂という人」)。 さらに江戸狂歌の大立者大田南畝の狂歌摺物(兼大小暦)を見出し、天明〜寛政という政変期の南畝を考える上で、1つの視点を提示した(「笑はば笑ヘ-政変期の南畝」)。
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