2006 Fiscal Year Annual Research Report
十八世紀英国における文化多元主義思想の発展とその衰退に関する研究
Project/Area Number |
17720047
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 光 神戸大学, 文学部, 助教授 (80296011)
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Keywords | 英文学 / インド / 18世紀 / 異文化 / 文化多元主義 / ブレイク |
Research Abstract |
本研究の目的は、18世紀後半のロンドンにおける文化多元主義思想の勃興とその衰退の過程を、同じ時期に生じていたキリスト教の相対化の動きと関連づけて解明することにある。平成18年度は、18世紀英国におけるインド文学・文化受容の諸相の解明に着手した。Sir William Jones、William Blake、18世紀インドに関する先行研究の探索と問題点の分析を行い、William Blakeの作品に見られる文化相対主義的キリスト教観とインド文学・文化との関連を、Blakeを取り巻く人脈を手がかりにして考察した。とくに、Blakeの作品のうち、キリスト教中心主義的な詩人John MiltonをBlakeがどのように批判したか、という点に注目し、BlakeのEurope(1794)とMiltonの'On the Morning of Christ's Nativity'(1629)を比較することによってこれを検証した。また、BlakeによるMilton批判を、Blakeが'Nativity'を題材として制作した二組の水彩画(1809,1815)に見いだし、Blakeが非キリスト教的他者の存在を、排他的なキリスト教を相対化する重要な契機と位置づけていたことを明らかにした。 本研究の一部をもとに、中京大学において開催された日本英文学会第78回大会において口頭発表を行った(発表題目:'Beware of being misled by his Paradise Lost' : Blake, Europe,'On the Morning of Christ's Nativity')。 また、文化多元主義思想と密接な関わりのあるユートピア思想のあらわれについて、ロンドンで上演中のミュージカル「レ・ミゼラブル」をもとに考察した。
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Research Products
(1 results)