2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本のシェイクスピア受容における影響のメカニズム-「影響の不安」を読み解く
Project/Area Number |
17720059
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
芦津 かおり 大谷大学, 文学部, 助教授 (30340425)
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Keywords | イギリス文学 / シェイクスピア / 異文化受容 / 日本:イギリス / 文学的影響 |
Research Abstract |
2007年度のInternational Shakespeare Congressにおいて"Foreign Shakespeare in the Postcolonial Age"と題するセミナーに参加し、大岡昇平作『ハムレット日記』に関する研究発表をする予定であるが、2005年度はその準備として主たる大岡昇平批評を収集・研究した。また、英語文献については、8月に10日間、イギリスの大英図書館およびオックスフォード大学ボドリアン図書館を訪れ、シェイクスピア劇の英語翻案作品、および本研究のキーワードである文学上の「影響」に関わる批評書を収集・研究することもできた。 これらの文献や資料の研究を通じて以下の点を解明することができた。『ハムレット日記』に隠されたシェイクスピアの「影響」は、シェイクスピアや西洋文化に対する大岡の憧憬や崇拝のみによって形成されたものではなく、アジア支配を試みた日本の一国民(とりわけ実際にフィリピン戦場に立った一兵士)としての大岡の罪悪感や贖罪の意識、さらには、いわば西洋の知的「植民地」となった日本人としてのコンプレックスやライバル心など、複雑な要素が交錯して生み出された産物である。現在、これをまとめる論文を執筆中である。 さらに、本研究の主題である異文化受容と影響のメカニズムを、別の角度から読み解く一つの試みとして、ドイツ演劇『エミーリア・ガロッティ』の英国初演の受容についての考察を行い、日本におけるシェイクスピア受容との類似性と相違点なども明らかにすることができた。この成果は、『真宗総合研究所紀要』に発表した。
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Research Products
(1 results)