2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本のシェイクスピア受容における影響のメカニズム-「影響の不安」を読み解く
Project/Area Number |
17720059
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
芦津 かおり Otani University, 文学部, 准教授 (30340425)
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Keywords | 日本 / シェイクスピア / 蜷川幸雄 / 『ハムレット』 / 異文化上演 |
Research Abstract |
平成19年度も引き続き、明治期以降の日本が西洋文学からうけた「影響」を解明する一つの試みとして、文化的イコンとしての存在感がもっとも強い作家シェイクスピアの戯曲が、日本文学・演劇のさまざまなテキスト生成にどのような力や影響を及ぼしているかを具体的に考察し、複雑で多元的な影響のメカニズムの解明にずいぶん役立てることができた。 第一の研究実績としては、日本を代表する演出家である蜷川幸雄によるシェイクスピア海外(ロンドン)公演に焦点を合わせた研究を行った。この研究は、蜷川演出の特色やそれに対するイギリス・日本の評価を詳細に分析することにより、演劇作品が文化的境界線を越えて受容される際に、いかに多様な政治的・文化的要因が作用するかを具体的に示した。また、イギリスと日本という二つの「場」を介して生み出されるカルチュラル・ポリティックスをも詳細に分析することもできた。本研究は、日本英文学会関西支部のシンポジウムにおける口頭発表を経て、活字の形で発表した。 第二の研究実績は、本研究の鍵概念である「影響」という観点から、明治から現代にいたる日本の『ハムレット』受容史をまとめ直した論考である。およそ150年ほどの受容期間を大まかに五つ時代に区切り、各段階における主たる特徴を解明したこの研究は、『ハムレット』が日本文学・演劇にあたえた「影響」の変遷の様子とその全貌を把握するのにきわめて有用な作業となった。
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Research Products
(3 results)