2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720060
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
近藤 直樹 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (30387980)
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Keywords | イタリア・ルネサンス / 宮廷喜劇 / コンメディア・デッラルテ / 喜劇の文体 / ラテン喜劇 / 戯曲と上演 |
Research Abstract |
初年度にあたる17年度は、16世紀イタリア喜劇における理想の文体について研究活動および発表を行った。100年間にイタリアで出版、上演された100篇以上の喜劇を調査する中で、そのほとんどが韻文ではなく散文で書かれていたことが判明した。唯一といっていいほどの例外は、世紀初頭の劇作家アリオストの作品であり、彼は韻文・散文の両方で喜劇を書いている。イタリア近代喜劇の第一作にもあたる『長櫃騒動』は散文で書かれており、以降の喜劇の文体の規範ともなったが、それが作家個人の創造力によるのではなく、15世紀後半のラテン喜劇の翻訳の文体の影響下にあったことを立証した。具体的には…1480年代にはじまるフェラーラ宮廷でのラテン喜劇の翻訳上演においては、最初は格調の高い文語調の韻文が使用されたが、90年代後半の宮廷人の書簡などから、公式の場以外では徐々にリアリティに満ちた散文が嗜好されるようになっていったことが見て取れる。イタリア語によるオリジナルの喜劇の誕生はその後になるが(1508年のアリオストの前述喜劇)、ラテン喜劇のイタリア語訳が、単なる翻訳というレベルを超えて、大きな影響を与えていたことが明らかになった。その成果は、6月の日本演劇学会大会で口頭発表の後、論文として「京都外国語大学研究論叢」に掲載された。また、9月にはコンメディア・デッラルテと狂言を比較したシンポジウム(京都・大阪)に参加し発表を行った。そして3月刊行の「京都外国語大学研究論叢」に、ソンミの『上演芸術に関する四つの対話』の前半部分を訳出した。これは16世紀半ばにイタリア語で書かれた対話編であるが、近代ヨーロッパ初の演劇論として名高いものの、邦訳は最初の試みとなる。前半部分は喜劇の誕生や文体論、幕の分割についてなど詩学的な色彩が強い。次年度は俳優論や舞台美術を扱った後半部分を訳出する予定である。
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