2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720060
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
近藤 直樹 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (30387980)
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Keywords | 演劇 / イタリア・ルネサンス / コンメディア・デッラルテ / イタリア文学 / 宮廷 |
Research Abstract |
当該研究の2年目にあたる18年度は、文人劇作家によるコンメディア・デッラルテの理解と評価について調査を進めた。同時代の文人たちは、概ね、コンメディア・デッラルテに対して、消極的な評価にとどまるか、あるいはほとんどの場合は批判の筆を向けていたのだが、フィレンツェの詩人にして劇作家アントン・フランチェスコ・グラッツィーニ(ラスカ)は、理想的な喜劇の一例として、熱狂的な賛辞を述べている。コンメディア・デッラルテのフィレンツェ公演が文人たちに与えた衝撃や、その人気にうろたえる文人たちの有様を述べた彼の詩には、過剰に偽悪的な趣味を差し引いたとしても、ラスカがコンメディア・デッラルテに与えた評価が見て取れる。また、1580年代に発表した喜劇『魔女』の序文において、ラスカは、当時隆盛を誇っていたアリストテレスらの「詩学」の指針に基づいた喜劇を理想とする「前口上」の擬人化を批判するにあたり、分かりやすい喜劇を提唱する「梗概」を登場させているのだが、この「梗概」もまた、コンメディア・デッラルテを評価するにあたり、その賞賛を惜しまない。コンメディア・デッラルテを巡るラスカのテクストは、彼の喜劇観だけでなく、その課刺の矢の矛先となった、いわゆる文人作家たちの反応を浮き彫りにさせていて、貴重な証言となっている。 今年度は、以上のように、コンメディア・デッラルテを巡るラスカの詩や劇を分析しながら、文人作家たちの喜劇観を考察した。その成果は19年3月発行の「美学芸術学」に、論文として発表した。
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