2006 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ紙弊制度の変遷と同時代アメリカ小説における想像力の相互関係
Project/Area Number |
17720061
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
秋元 孝文 甲南大学, 文学部, 助教授 (70330404)
|
Keywords | アメリカ文学 / アメリカ紙幣史 / 紙幣論 |
Research Abstract |
2006年2月に出版された共著で扱った植民地時代の紙幣の問題を受けて、さらなる紙幣史のリサーチの必要を痛感し、8月にイリノイ大学図書館を中心にリサーチのため渡米。Counterfeit Detectorなどの貴重資料にあたることで19世紀の紙幣制度、いわゆる"free bank era"についてあらたな着想を得、Horatio Alger著Ragged Dickに描かれた偽札をきっかけに、19世紀アメリカの立身出世物語における道徳と外見の問題を論じる「Ragged Dick's Appearance-読むこと、読まれることと社会的上昇」を執筆。当時の紙幣を読むためにはclose readingが必要であり、紙幣は読まれるべきテクストで、そして紙幣が偽装し詐欺師が服装を偽装したのと同様に、立身出世物語の主人公であるDickの成功も実は外見を変え、読まれるテクストとして「高く」なったことに起因すると論じる。『英文学研究』に投稿(現在審査中)。また、紙幣論と小説論の間をつなぐものとしてアートを取り上げ、研究計画全体の序論とすべくアーティストJ.S.G.Boggsを扱う[J.S.G.Boggsについて-文学と紙幣の比較研究のために」を着想。アメリカ学会が発行する『アメリカ研究』に投稿の申し込みをする。もう一点、Paul Austerの、Brooklyn Follies(2006)において展開される絵画の贋作、ホーソーンの原稿の贋作を題材に、オリジナルと贋作の関係を、作品の結末である9/11テロとからめて論じ、アメリカ文学会の『アメリカ文学研究』に投稿したく、目下執筆中である。そのほか紙幣に関する哲学的考察、とくにジンメルの著作などを中心に研究を進め、新たな構想を得るべく、鋭意研究中である。
|