2005 Fiscal Year Annual Research Report
「リアリティTV」時代におけるドキュメンタリー文学の可能性
Project/Area Number |
17720070
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
中垣 恒太郎 常磐大学, コミュニティ振興学部, 専任講師 (80350396)
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Keywords | ドキュメンタリー / ノン・フィクション / ニュー・ジャーナリズム / ダイレクト・シネマ / リアリティTV / メディア論 / 虚構 / TVバラエティ |
Research Abstract |
ドキュメンタリー映画再評価の現況から、文学においてノン・フィクションの分野がどのように探求されてきたかを展望している。はたして純粋に客観的に事実を描くことは可能であるのか。ノン・フィクションのジャンルの歴史は常に虚構性についての根源的な問いかけでもあった。1970年代に現れたニュー・ジャーナリズムの台頭は、客観的であるべきとされていたノン・フィクションのジャンルにあえて一人称の視点を導入することによって、「ノン・フィクション」というジャンルの制約から解き放たれ、新しい光を投げかけた。文学研究において「ノン・フィクション」のジャンルの概観と、小説や映画などの隣接する分野との比較考察は未だ研究の途上にある。映像におけるダイレクト・シネマと称する一人称のカメラ・ワークがニュー・ジャーナリズムに与えた影響など、文字媒体のみに視野を限定していたのでは見えてこない側面が少なからずある。 最新の米国TVバラエティ番組に目を向けるならば、「リアリティTV」と称されるノン・フィクションのフィクション化が極度に進んだ実例を目にすることができる。裁判やデートなどタレントではない一般視聴者の私生活にカメラを向ける行為までもがフィクションの誘惑から免れることがもはやできない。向けられたカメラを一般視聴者が意識した瞬間に、あるいはメディアを媒介にした瞬間に、純粋なノン・フィクションという営為はすでに成立しえない。また、虚構として描くことによりリアリティがもたらされ、ノン・フィクションやドキュメンタリーが虚構性を内包せざるをえなくなる。この「リアリティTV」時代にフィクションとノン・フィクションはどのように交差・融合、あるいは回避しえるのか。ニュー・ジャーナリズム以降、現在のドキュメンタリー再評価に至るまでの時代を概観しつつ、映像・文学表現を含む新しい表現の可能性についての分析を継続していく。
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Research Products
(6 results)