2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後台湾社会における「日本語人」の文化活動及びその影響に関する研究
Project/Area Number |
17720075
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
李 郁惠 立命館大学, 経済学部, 講師 (80399071)
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Keywords | 台湾 / 日本語人 / 日本語文学 / 日本人論 / 日本精神 |
Research Abstract |
本年度は昨年度実施した研究活動で浮上した課題の「日本精神」をキーワードに、引き続き資料の整理・解読作業に取り組んだ。具体的に、「日本人論」をめぐる明治時代以来の資料や論文を手に入れることができる範囲で取得し、丹念に読むことで、その系譜を理解すると同時に、そこから植民地教育で謳われた「日本精神」等の言葉が生まれた経緯やその言葉の概念を明らかにしようと努めた。一方、夏休みを利用して台湾に出張し、フィールドワークを実施した。「日本精神」の解釈を中心に「日本語人」世代の声を記録し、またそれがどういう次元で表現されているのかをつぶさに観察してきた。これらにより、来年度の最終課題として提出する予定の成果発表のアウトラインができあがりつつある。まず間題提起としては「日本語人」世代の記憶に着目し、中でも「日本精神」についての語りを軸とする。次に、「日本人論」の系譜をたどりながら、教科書や文献などを手がかりに植民地教育の実態を解明する。この「日本精神」における歴史的要素を確認したところで、現代の台湾社会では受容をいかにされてきているかを見ていく。資料として父祖たる「日本語人」世代を描く映画などを使う予定だが、それを同世代が次世代へ及ぼした影響として分析していきたい。 なお、研究出張期間中、現地の世新大学が主催する『2006年世界日本文學國際合議』に招かれることとなり、10月に再び台湾に出向いて研究発表を行った。題目は「中島敦<馬麗亞>-殖民地新興知識人之典型-」で、現地の出席者が多いことを考えて中国語で発表した。中島敦など日本人作家の描写を通じて「日本語人」という言葉の記号学的意味を探るのが趣旨であり、結論的には中島敦の「マリヤン」を植民地出身の新興エリートの一典型として指摘し、モデル化を試みた。
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Research Products
(1 results)