2005 Fiscal Year Annual Research Report
テンスとアスペクトの統語論的研究に基づく普遍文法の解明
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17720077
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 芳樹 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (20322977)
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Keywords | テンス(時制) / アスペクト(相) / 統語と意味のインターフェイス / 普遍文法 / 日英語比較統語論 |
Research Abstract |
「テンス(時制)」と「アスペクト(相)」はともに時間に関わる言語表現であるが、前者が時間を点として捉え、後者は時間を線として捉えるという違いがあり、この両者が言語表現の時間についての意味を決める上でどのように相互作用するかは、言語ごとに微妙に異なる。また、時制と相を表す形態素は、日本語だけを見ても、基本となる用法の周辺にさまざまの派生的用法をもち、多様な意味や状況を表すことから、時制と相にまつわる広範な現象のうちのどの側面を中核的現象とみなすかによって、さまざまに異なる一般化を導くことができる。したがって、時制と相の研究の現状は、理論的説明を追求することと平行して、記述的一般化の精度を高めることにも力点を置く必要がある。 このような現状を踏まえ、「平成17年度の研究成果」に記した論文では、生成文法理論の見地から、特に、日本語の相形態素「(て)い」と時制形態素「る」を取り上げ、「「ている」と同じ意味で「る」が用いられるのは、それが何らかの演算子によって構成素統御されている場合に限られる」という記述的一般化を示し、これを説明する理論的道具立てとして、極性表現の一種としての「時の普遍量化子」を提案した。これは、16年度に刊行された論文「The Simple Present Tense in Japanese and the Phonetically Empty Universal Quantifier」を縮約し改良を加えたものである。いずれの論文も、日本語の時制形態素の特徴に限って論じたものである。 この提案を基盤として、来年度は、英語の時制形態素と相形態素、日本語の相形態素についての研究へと拡充し、さらに、日本語と英語の動詞の語彙的意味に共通の特徴と相違点を明らかにするとともに、普遍文法に内在すると考える「時の普遍量化子」の本質的特徴を明確にすることを通して、普遍文法の解明に寄与する論文を仕上げる予定である。
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