2006 Fiscal Year Annual Research Report
バリ語(インドネシア)の形態、統語、意味にかかわる包括的研究
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17720081
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
塩原 朝子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (30313274)
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Keywords | インドネシア / バリ語 / 文法 / 統語論 / 形態論 |
Research Abstract |
本年度は、前年度から行ってきた動詞の形態論の研究を継続した。 具体的には、塩原がこれまでの現地調査によって収集した動詞のデータを中心に、現在公刊されている辞書Kersten(1980)、Barber(1979)からのデータを加えた動詞に関するデータベースの構築を行った。 当初、国内のバリ語話者に調査協力を求める予定であったが、適当な協力者をみつけることができず、聞き取り調査は行うことができなかった。 上記のデータベースをもとに、特に他動詞形成接辞である-ang, -inの機能、および、接頭辞ma-の機能に関する記述を行い、その成果を論文「バリ語の接頭辞ma- --「終結点を持たない状況」を標示する接辞--」にまとめた。この論文は、バリ語の自動詞を派生する接頭辞ma-の機能を包括的に扱ったものである。ここでは、この接頭辞が語基の種類によって一見さまざまな機能を持つように見えるが、すべてのケースにおいて「終結点を持たない状況」を表すことから、そのような意味の標示がこの接辞の一次的機能であるということを示した。 また、2006年7月1日の東京大学アジア・アフリカ言語文化研究所、共同研究プロジェクト『形態・統語分析におけるambiguity(曖昧性)--通言語的アプローチ--』研究会において、『バリ語のApplicative』と題する口頭発表を行った。ここでは、バリ語のいわゆるapplicativeの接辞-inと-angの機能を概観し、それぞれの一次的機能が「増項」と「動詞における格関係標示」であることを示し、これらの接辞による派生動詞が担う‘applicative'の機能は、それぞれの一次的機能の反映であることを主張した。
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