2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720083
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
勝川 裕子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 助教授 (40377768)
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Keywords | 現代中国語 / 領属 / 照応形式 |
Research Abstract |
本研究は、これまでの先行研究において個別的な事象の指摘に留まっていた言語現象について、領属範疇の観点から捉えなおし、最終的には中国語話者の「領属」に対する認知パターンとそのプロトタイプ効果を明らかにすることを目的としている。分析の足がかりとして、平成17年度は、現代中国語において主語・賓語間に領属関係が存在するとき、領属先である主語に照応する賓語の連体修飾部にどのような照応形式が用いられるか、そしてその照応形式が選択さされる背景にはどのような要素が関係しているかについて考察を試みた。 (1)〓三刷{^*他的/^*自己的/φ}牙了。 (2)〓硬是改変了{?〓的/自己的/φ}看法。 (3)〓三打了{他的/自己的/φ}儿子。 (4)李四弄坏了{他的/自己的/??φ}照相机。 現代中国語では主語・賓語間に領属関係が存在するとき、領属主である主語に照応する賓語(領属物)の連体修飾部には、i)人称代名詞、ii)再帰代名詞のように領属先をovertな形で明示するケースと、iii)ゼロ形式のように領属先を明示しないcovertなケースがあるが、これらは任意に選択されるわけではない。身体部位(例1)や属性(例2)など不可譲渡性の高い領属物ほどcovertな表現形式であるiii)型が選択され、親族関係(例3)、一般領有物(例4)の順に可譲渡性が高くなり、overtな形式であるi)型、ii)型が選択される傾向にあることが判明した。また、"領主属賓句"や授与構文、領属性"被"構文において、賓語位置に可譲渡性の高い一般領有物がノーマークで現れ得る理由については、構文そのものがすでに領属的意味を有しており、主語・賓語間の領属関係を予測させるに充分であるためであると指摘し、これを論文『主語・賓語間の領属関係と照応形式』(査読付き。掲載誌は11を参照。)として発表した。 論文執筆にあたり、日本中国語学会東海支部例会(2005.10.8於愛知大学)と日本中国語学会第55回全国大会(2005.10.30於筑波大学)において口頭発表し、他研究者との意見交換を図った。
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