2005 Fiscal Year Annual Research Report
京阪式音調(高起平進式・低起上昇式)の音調幅に関する社会言語学的研究
Project/Area Number |
17720099
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
余 健 三重大学, 教育学部, 助教授 (90345968)
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Keywords | 高起(平進)式 / 低起(上昇)式 / アクセント発話調査 / アクセント知覚調査 / 自然下降度の大きさ / ピッチパターン幅 / 揺れ / 高起式と低起式の基準 |
Research Abstract |
大阪北部域出身の高年層(50代以降)と若年層(10代)を中心に約50名のアクセント発話調査を行った。また、京阪式アクセント出身者37名、非京阪式アクセント出身者13名の計50名(20〜30代)に対して、アクセント知覚調査を実施した。垂井式アクセント出身で大阪在住歴10年目の移住者の京阪式的なアクセントを聞いて、高起式と低起式のどちらに聞こえるか、判断を求めた。まず、アクセントの発話録音調査に関して高年層、若年層の代表的なピッチパターンから仮説的に言えることは以下の通りである。1点目として高起平進式の文において、高年層に比較して若年層における自然下降の度合いが、かなり小さくなっており、高年層の右肩下がりの傾向から若年層の水平的な傾向、更には東京式の右肩上がりの傾向へ推移している。この音声レベルにおける現象は、普段の意識には昇りにくい特徴であるが、「右肩下がりの自然下降度の大きさ」がより京阪式アクセントらしさを感じさせる一端を担っている可能性を指摘できよう。2点目としては、高年層より若年層の方が、準アクセントの影響をより強く受け、2句目以降のアクセント核やアクセントの上昇の実現が小さくなっている。上記2点より、言えそうなことは、大阪北部域において高年層より若年層の高起式・低起式のピッチパターン幅が全体的に小さくなっていると言えそうである。この点に関する社会言語学的な要因としては、大阪北部域が他地域からの移住者が多い点やテレビからの東京式アクセントの影響等を挙げられるだろう。次に垂井式出身大阪在住者の発話に対する知覚調査については、現段階で言えることは以下のとおりである。京阪式出身者の場合、1回目と2回目で高起式か低起式かの聞き取りの判断に比較的揺れは少なく、全体的な垂井式話者のアクセントの発話に対する京阪式らしさの判定も「京阪式的ではない」という判断を下している人が多い。対して非京阪式出身者の場合は、1回目と2回目で高起式か低起式かの聞き取りの判断に比較的揺れが大きく、全体的な垂井式話者のアクセントの発話に対する京阪式らしさの判定も「比較的京阪式的である」という判断を下している人が多い。これは、前者の場合は高起式と低起式の基準を持っているのに対して、後者の場合はそれらの基準を持っていないことによるものと言えそうである。発話・知覚項目共に分析の中心点になる高起式と低起式の基準についての検討を今後急ぎ、来年度の大阪南部域調査に繋げたい。
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