2005 Fiscal Year Annual Research Report
方言音声の発話生成・知覚に基づく韻律情報の獲得過程の解明
Project/Area Number |
17720108
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白勢 彩子 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (00391988)
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Keywords | 音声言語 / 韻律的側面 / 発話生成 / 音声知覚 / 獲得過程 / 言語間比較 / 日本語方言 |
Research Abstract |
言語の韻律的側面,特に語のアクセントに着目し,言語心理学的手法により音声知覚実験を行なって幼児期における環境刺激への感受性を調べた.韻律情報に対する知覚的側面と発話・生成との連関を検討して言語獲得機構および言語の普遍的獲得過程,個別的過程についての議論を行なう.言語間比較・対照研究により詳細に分析するため,日本語の代表的アクセント地域に生育する幼児,養育者(成人)を被験者とした. (1)知覚実験:幼児の日常語を検査語彙として,母方言のアクセントを含む異なるいくつかのアクセント型を合成した刺激音声を呈示し,アクセント聴取の閾値を測定した.本年度は,2〜6歳児および成人約300名に対し,東京,鹿児島方言地域で実験を行なった.音声刺激は,MATLABをベースとした音声分析・再合成により作成された.実験では,ノート型PCを用いて検査語彙の絵刺激と合成音声刺激を呈示して進めた.刺激呈示の手続の構築は研究補助者に依頼した.実験には調査旅費,調査補助者への謝金が使われた. (2)発話生成実験:知覚実験に用いた検査語彙について,知覚実験に参加した者と同一被験者に対しアクセントの発話資料を収集した.被験者の発話生成を音声収録器にてメモリカードに記録した.収集した発話資料は,音声の専門知識を有した研究補助者によりラベル付け,書き起こしがなされた. (3)研究成果:知覚実験の結果,発達のより早い段階では,アクセントの聴取の閾値が低い,いわば「聴き取りの鈍さ」の傾向が観察された.鹿児島方言地域では幼児,成人ともにアクセント聴取の閾値がより低い傾向が観察された.発話実験の結果,知覚調査でアクセント聴取の閾値が低い被験者においても,母方言のアクセントが「正しく」発話生成されることがわかった.しかしながら,鹿児島方言地域では必ずしも母方言に従ったアクセントが生成されるわけではないことがわかった.
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