2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720112
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
三好 暢博 旭川医科大学, 医学部, 講師 (30344633)
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Keywords | 生成文法 / 比較統語論 / パラメータ / 極小主義 / 空主語 / Verb Second / Bare Phrase Structure / 古フランス語 |
Research Abstract |
生成文法におけるパラメータという概念の導入は言語学史上かつてない視点をもたらした。とりわけ、単一のパラメータが複数の一見異なる現象と関係している可能性を予測しうる点で、パラメータの導入は比較統語論における類型論的相関関係の記述に関し新たな視点を切り開いたといえよう。しかしながら、パラメータの導入は、本質的には相容れない文法現象を単一のパラメータに帰着させ、言語現象の本質を曖昧模糊とさせる危険を常に孕んでいる。この点においてパラメータの導入は諸刃の剣であり、個々のパラメータの経験的妥当性を検証することが理論全体の健全さを保つために必要となる。本研究の目的は、Hyams(1982)以来、いくつかの定式化が試みられてきた空主語パラメータの関連現象を洗いなおすという作業を通して、このパラメータの肥大という問題の解決法を探ることにある。 本年度は、定動詞第二位と空主語を中心に研究を進め、定動詞第二位言語に見られる空主語に対するAdams(1987),Roberts(1992)、Vance(1997)に代表される先行研究が抱えるジレンマを解消した。具体的には、古代フランス語の空主語がproではなくPFインターフェイスにおける主語の削除現象であると主張し、空主語が空主語パラメータとは無関係に存在しうることを明らかにした。この主張は、現代ゲルマン及びスカンジナビア諸語の一般化、古代ギリシャ語やサンスクリット語に見られる韻律パターンからも支持されうるであろう。そして、この主張は以下3点の理論的可能性を支持することとなるであろう。(1)Oku(1998),Saito(2003)に代表されるnull argumentsの研究、(2)定動詞第二位の現象がPFの現象であるというChomsky(1994)及びBoskovic(2001)の主張、(3)通時的に観察されたロマンス諸語の"skewed pro"はそもそもイタリア語などに見られるproではない。(これらの成果の一部を、第23回日本英語学会(於九州大学)にて報告した。)
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