2005 Fiscal Year Annual Research Report
モダリティからみた他動性の研究-英語とアリューテック語の比較対照の観点から-
Project/Area Number |
17720114
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田村 幸誠 滋賀大学, 教育学部, 講師 (30397517)
|
Keywords | sound-emission verbs / transitivity / Eskimo / motion verbs |
Research Abstract |
今年度は本科研費による研究の一年目であり、計画通り基礎調査に重点をあてた。他動性に関する基本的文献をreviewするとともにアラスカ、フェアバンクス市においてエスキモー語(アリューテック語及びユピック語)の聞き取り調査を行った。また成果の一部に関しては全国学会発表(日本認知言語学会第六回大会 於 お茶の水大学(2005/9/17))も行った。 具体的には今年度は主に自動詞構文、そしてモダリティ的要素としては音(sound)に焦点をあて、自動詞構文では音に関する特徴がどのように言語化されるのかを調査した。英語、エスキモー語を中心に、基本的特徴を分析した上で、他言語(タイ語、ロシア語、日本語)との比較も行った。英語、エスキモー語以外の言語特徴も視野に入れた理由は、基本文献の確認作業を行う中で、別の系統に属する言語の他動性を踏まえたパラメター化が可能であるのではないかと考えたからである。 本研究はもちろんまだ最終的な成果を発表できる段階にないが、ここまでの成果は次のとおり要約できる。例えば、英語の一般的な自動詞構文として次のようなものがある。The train rumbled into the tunnel. Slobinの様態動詞の研究に従えば、ロシア語、タイ語でもこのような主要部にsound-emission動詞が来ることが可能であると予測されるかもしれない。しかし、実際音の様態移動に関してはロシア語、及びタイ語は英語と同じ形式的特徴を示さず、むしろエスキモー語や日本語と同じ特徴、すなわち、移動動詞が主要動詞として用いられ、音の様態部分は付加詞として言語的には表現されることがわかった。 この研究が含意することは次の二点にある。まず、多くの研究では様態移動と音移動は大きく区別されずに分析されているが、英語以外の言語を視野に入れて分析すると、各言語により差が出るということ、つまり英語の特徴が普遍的なものでないことがわかった。二点目は、音を主要動詞に持ってくるという統語的特徴は極めて珍しく、他のヨーロッパ言語と比較しても非常にまれな特徴をしめすものであることがわかった。 来年度は、音と移動の研究を発展させつつ、さらに、アリューテック語のantipassiveの特徴を組み入れたいと計画している。
|
Research Products
(2 results)