2005 Fiscal Year Annual Research Report
13・14世紀の掛幅縁起絵・伝記絵の基礎的調査と絵画研料論的検討
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17720149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 重雄 東京大学, 史料編纂所, 助手 (40313192)
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Keywords | 日本史 / 中世史 / 美術史 / 絵画史料論 / 掛幅縁起絵 / 『観興寺縁起絵』 / 『温泉寺縁起絵』 |
Research Abstract |
1、『観興寺縁起絵』原本と現地および観興寺所在模本の調査(2005年8月:京都市、同年11月:久留米市・日田市など)『温泉寺縁起絵』関連資料の調査(同年12月、神戸市)、京都国立博物館寄託の掛幅縁起絵をはじめ近畿地方・東京近郊所在の景観表現を含む中世絵画の調査もしくは観察を行った。おおむね美術史研究者との共同によるものである。『観興寺縁起絵』の物語の舞台は、筑後川の流れに沿って福岡県域から大分県域を往還するものであるが、考古学や歴史地理学的な先行研究も収集した上で現地踏査を行うと、両地域の歴史的・地理的なつながりを実感することができた。加えて、観興寺背後の山並みの平野側からの遠望や描かれた泉の所在を確認しえたことは、現地調査ならではの成果である。また『温泉寺縁起絵』関連資料は、目録上所在は知られていたが内容を検討した報告などはなされたおらず、新出に近いものである。 2、簡便に近赤外線撮影が行えるデジタルカメラを購入して試用した。とりわけ、現状でほとんど判読できない頂相の賛・印章の解読には相当の効果があり、一般研究者の調査でも利用可能であることを確認した。 3、美術史学・建築史学・歴史学などの研究者が参加する研究会にて、『観興寺縁起絵』(同年10月3日)・『温泉寺縁起絵』(同年12月3日)について口頭報告を行った。 4、『温泉寺縁起絵』のトレース図版を美大大学院生に委嘱して作成した。トレース図の校正は、作品を綿密に読解する点で研究にも有益な方法である。 5、既存・新規撮影の35mmカラースライドのスキャニングを行った。 6、科研採択以前よりすすめている関連文献の収集と咀嚼、教材化を継続・蓄積し、縁起を歴史史料として活用する実践的な論文を発表した。
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