2005 Fiscal Year Annual Research Report
清朝によるモンゴル統治メカニズムの研究-皇帝の王公支配と旗社会の変容をめぐって
Project/Area Number |
17720171
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中村 篤志 山形大学, 人文学部, 講師 (60372330)
|
Keywords | モンゴル / 清朝 / 乾隆 / 王公 |
Research Abstract |
広大な版図を有した清朝の統治構造は、時に「ゆるやかな統合」「帝国的統治構造」などと形容されるが、清朝が個々の地域、就中「周縁」の藩部地域をいかに統治したか、その実態は十分解明されていない。特にモンゴル史研究においては、清朝の定めた身分制度や法制度などが現地社会に浸透する一方、モンゴル王公による恣意的支配も併存・持続されると論じられてきた。しかし、統治制度の強制にせよ恣意的支配の放任にせよ、その前提となる時々の皇帝の具体的政策やその背景・意図は充分検証されていない。 そこで本研究では、一つの画期とされる乾隆40〜50年代を対象に、第一に、皇帝の対モンゴル王公・社会政策とその背景・意図、王公間の勢力関係などを解明し、第二に、モンゴル社会の基本的権力構造の在り方を解明した上で、皇帝の政策・意図がモンゴル側にいかに認識され、いかなる社会変容をもたらし得たのかを解明する。総じて、政治史と社会史・制度史をリンクさせより包括的な歴史像構築を目指すものである。 本年度は、海外調査による基本史料の収集を中心に、国内外の学会において成果を発表した。第一点目の清朝中央部の政争については、8〜9月の北京・第一歴史档案館での史料調査により政治事件の具体的経緯・背景を解明した。その成果を10月の東北史学会において「乾隆48年トシェートハン失脚事件とその背景〜乾隆帝のモンゴル統治をめぐって」と題し報告した。第二点目の社会変容については、モンゴル国立歴史中央文書館所蔵のモンゴル語史料を分析し11月に東北アジア研究センター共同研究会で発表した他、12月の国際シンポジウム「1911年のモンゴル民族革命の前提条件と国際情勢」(於ウランバートル)で「清朝統治とモンゴルの社会変容」と題し報告した。本年度の成果は既に原稿にまとめており来年度投稿予定である。
|