2006 Fiscal Year Annual Research Report
湾岸アラブ諸国における「国史」の形成と国民統合に関する基礎研究
Project/Area Number |
17720172
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松尾 昌樹 宇都宮大学, 国際学部, 講師 (10396616)
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Keywords | 地域研究 / 社会学 / 民族学 / 東洋史 / オマーン:イギリス / アラブ |
Research Abstract |
本研究は、日本で全く行われていない分野の基礎研究であるため、今後の研究体制を整える目的もあり、資料収集を中心に行った。 初年度(平成17年度)の現地調査により、1960〜70年代のオマーン史の資料はオマーンでは入手できず、またその時代のオマーン史の研究そのものがタブーであることが判明したため、今年度(平成18年度)はオマーンではなく、周辺アラブ諸国での調査を行った。 (1)シリアでの調査 シリアは、1960年代のオマーンに存在した宗教政権(イマーム政権:今日のオマーンの政権は1960年代のイマーム政権の存在を隠蔽している)を強く支援した国家のひとつである。また、湾岸アラブ諸国に比して古書市場が確立しているために、1960年代の資料収集という観点からは、オマーン等の湾岸諸国での調査よりも効果があった。特に、イマーム政権のイデオローグと見なされていたイバード派イスラム学者の書籍の初版を利用することが出来た点は大きい。 (2)エジプトでの調査 1960年代から70年代にかけてのアラブ連盟において、オマーンにおけるイマーム政権と世俗政権との内戦が何度も取り上げられており、この際に出された決議を調査する目的でエジプトでの調査を行った。現在、アラブ連盟のウェブサイトで部分的に決議が公開されているが、それは不十分なものである(そもそもすべての決議のリストが公開されていないため、どの程度不十分なものかを判断することもできない)。また、国内の図書館をはじめアメリカ議会図書館や大英図書館でも、アラブ連盟の決議集は完全には保存されていないため(日本の図書館では皆無)、現地での調査が不可欠であった。また、現在のところ、アラブ連盟の決議集は販売されていない。また、初年度(平成17年度)の調査でロンドンを訪問した際、ロンドンのアラブ連盟事務局を訪問したが、決議集は部分的にしか保管されていなかった。これらの状況から、アラブ連盟の決議を調査するためには、カイロのアラブ連盟事務所の図書館での決議集の調査が不可欠である。 今回のエジプトでの調査を通じ、決議集の写しを取ることが出来たのは、今後の研究に大きく資すると考えられる。
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