2006 Fiscal Year Annual Research Report
出版宗教本にみる19〜20世紀前半におけるインドネシアのイスラーム思想展開
Project/Area Number |
17720174
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
菅原 由美 天理大学, 国際文化学部, 講師 (80376821)
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Keywords | 思想史 / 宗教学 / 出版 / イスラーム / 近代 / インドネシア / 宗教教育 |
Research Abstract |
1.スマトラ南部パレンバンの出版状況 アブドゥスサマッド・パレンバーニーをはじめとする多くの署名なイスラーム学者輩出しているパレンバンはイスラーム学が熱心に学ばれた地域の一つである。そのため、多くのイスラーム学関連写本が宗教塾やアラブ人の家庭に保管されていた。イスラーム学者によってアラビア語文献のマレー語への翻訳がなされていた。特に、イスラーム法学についてのマレー語訳が多くなされた。そうしたキターブ(宗教本)はパレンバンでも出版されたが、都市周辺で流通する程度であったようである。むしろ西スマトラからの出版物がパレンバンにも出版されたが、都市周辺で流通する程度であったようである。むしろ西スマトラからの出版物がパレンバンにも出回っていた様子がうかがえた。 2.西スマトラの出版状況 信仰に厚い西スマトラの人々が集まる宗教塾にも、やはりイスラーム学の写本が多く保存されている。出版に関しては、特にブキテッインギでジャウィ(アラビア文学マレー語)の宗教書物が出版されていたことがわかった。ただし、20世紀初頭、西スマトラからは多くのジャウィによる定期刊行物が刊行され、島嶼部で広く流通していたが、これらは現在では入手が難しい。 3.北スマトラの出版物流通状況 アチェも宗教色の強いことで有名な地域であるが、ジャウィによる出版物はアチェ周辺で流通するものしか見られなかった。一方、メダンからのジャウィ出版物もアチェで流通していた。 4.スマトラの宗教出版物 スマトラでは比較的小規模に、周辺地域でのみ流通するキターブの出版が見られた。また、それも20世紀前半で消えていってしまったようである。その後ジャウィ・キターブの出版はジャワ、特にスラバヤとジャカルタによって担われていったことがわかった。アラビア語書籍が多く読まれながらも、実際には庶民向けにはジャウィが広く読まれ、特にその歴史はジャワよりも古いことが見て取れた。
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