2006 Fiscal Year Annual Research Report
漢代国家財政の在地社会統御機能の実態とその史的変容
Project/Area Number |
17720175
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
小嶋 茂稔 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (20312720)
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Keywords | 張家山漢簡 / 二年律令 / 秦漢財政史 / 睡虎地秦簡 / 土地制度 / 徭役制度 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続き、漢代初期における租税徴収・土地所有に関わる諸史料の読解を進めた他、新たに労働力編成の問題にも着目し,張家山漢簡「二年律令」の中の「興律」「徭律」等にも分析の対象を拡大して、史料の読解を進めた。特に紀元前3〜2世紀頃の徭役に関していえば、睡虎地秦簡に含まれる内容もなおざりにすることができないため、睡虎地秦簡までも検討の対象に含めて、分析を進めた。 一方、前漢中期以降の国家財政のあり方も分析の射程に含みこんでいく必要があることから、特に今年度は『塩鉄論』の精読も出土史料の検討と並行して進めた。その他、文献では『史記』では平準書を中心に『漢書』では食貨志を中心に精読した。また昨年度に引き続き、日本・中国双方の研究成果を分析して、両国の研究者間における理解の差異を明らかにすることに極力努めてもきた。 以上のような作業の結果として、本研究の最終年度にむけて、基礎的な史料の分析を自分なりに深めることができ、また戦国から秦・前漢にかけての様々な財政に関わる諸制度にういての日本の学界と中国の学界との間の理解の差異を認識することが出来た。単なる制度の理解ということを超えて、前漢初期の財政諸制度の存在が、当時の中国社会内部での経済的資源の分配とどのように関わり合いがあったか、一定程度の見通しを獲得することができた。 上述した成果について、遺憾ながら本年度中に学術論文等の形で公開するには至らなかったものの、部分的な成果については、(財)東洋文庫張家山漢簡研究会や東北大学漢簡研究会等の席上で積極的に報告し、列席者からの有益な批判を受け、成果の検証をもあわせて深化させているところである。
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