2005 Fiscal Year Annual Research Report
中央ユーラシア国家としてみた大清帝国の統治機構の研究
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17720176
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
杉山 清彦 駒澤大学, 文学部・歴史学科, 専任講師 (80379213)
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Keywords | 大清帝国(清朝) / 中央ユーラシア / 八旗制 / 満州 / 女真 / 近世 / ヌルハチ / ホンタイジ |
Research Abstract |
研究初年度である本平成17年度は、資料の収集・整理はじめとした研究基盤の整備に重点を置きつつ、段階的に研究成果の公表を進めた。 ツングース系満洲人によって16〜17世紀に建設され、18世紀にかけてユーラシア東方を席巻する帝国となった大清帝国は、通行の理解では、科挙・儒教など明の統治制度・文化をほぼ全面的に継承した最後の中華王朝であり、皇帝以下支配集団は、制度面のみならず言語・習俗面でも漢化したとされている。しかし、研究代表者のこれまでの研究、および本研究によれば、上記の通説的理解は被支配下の漢人の側から見た一面的なものにすぎない。支配集団の側からみるならば、大清帝国はモンゴル帝国に代表される中央ユーラシア国家型支配体制を本質とする帝国であり、明の統治制度の継承は、文化的被征服とみるべきではなく、満洲人支配の下での在地秩序の尊重ないし放任の一環と理解すべきである。本研究で主たる研究対象に据えている満洲人の軍事=社会組織・八旗制こそ、その核心をなすものであり、本年度の研究によって、清代の八旗制には、前代の明代女真社会の諸勢力・諸集団が継承されていることを明らかにした。 他方、八旗制を核とする大清帝国の支配構造を世界史的・比較史的に鳥鰍するとき、軍事行動を前提に編成され経験的・慣習的原則で律される武人集団が、恒久的支配の確立とともに統治集団に衣更えしてゆくという点において、アイシン=ギョロ氏一門を君主に戴く八旗が頂点に立つ大清帝国と、徳川氏と諸大名を君主に戴き武士が統治を担う江戸幕府とが非常に近似した存在であることを指摘した。 このように大清帝国は、ユーラシア東方ないしマンチュリアにおける通時的な歴史展開を背景とする側面と、近世に新秩序を確立した政権という共時的側面という二つの面から位置づけることができる。それぞれの面における実証の深化と理論の構築とが次年度以降の課題となる。
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