2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮野 裕 北海道大学, 大学院文学研究科, 助手 (50312327)
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Keywords | ロシア / イヴァン3世 / 正教会 / ビザンツ / イヴァン雷帝 / ヨシフ・ヴォロツキー / ノヴゴロド / フェラーラ |
Research Abstract |
研究代表者は、上記研究課題について、3点について進めることが出来た。 第一に、研究代表者は、中近世ロシア国家の権力の正統性について、これが意識され始めたと想定されるモスクワ大公イヴァン3世治世(1462-1505年)における、それまでの「正統的源泉」であったビザンツ国家、ビザンツ教会の描かれ方の変化を、主に年代記史料を利用して検討した。この検討の中心は、カトリック教会と正教会との合同を宣言したフェラーラ・フィレンツェ公会議である。ロシアにおいては、この会議の描かれ方が、イヴァン3世の時代に近づくにつれ、若干の変化を見せる。この変化は、恐らくは、ロシア国家の権力の正統性意識と結び付いていると考えられる。但し、今後も継続されるべき課題である。 第二に、16世紀ロシア国家の法的基盤の解明のために、イヴァン雷帝の法典の日本語訳を作成し、これに訳注を付ける作業を継続した(31-49条)。この研究は次年度にも継続される。 第三に、ロシア国家の権力基盤を支える装置として従来重要な位置を与えられてきた正教会について、同時代の異端事件を検討することにより、正教会の権力と国家の権力との相互補完の具体相を明らかにした。すなわち、国家案件の処置に際し、国家は、単独ではこれを解決できなかった。それ故に、国家は教会の専権事項であった異端裁判を国家案件の解決のために利用した。この経験こそが、ロシア国家と教会との政教一致というイデオロギー的側面を支えたと考えられる。
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Research Products
(2 results)