2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17720188
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
武田 元有 鳥取大学, 大学教育総合センター, 講師 (40283965)
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Keywords | ロシア / トルコ / 黒海 / 貿易 / 東方問題 |
Research Abstract |
本研究は18-19世紀の黒海沿岸地帯における国際商業と外交問題との統一的把握を課題としているが、その一環として、本年度は18世紀初頭ピョートル大帝時代のバルト海進出から18世紀末エカチェリーナ二世時代の黒海進出への転換過程を媒介した18世紀中葉のエリザヴェータ女帝時代を対象に取り上げ、経済的なロシア海外貿易の構造と政治的なロシア南下政策の動向、両者の連関把握を試み、以下の知見を得た。 第一にロシア海外貿易の構造については、一方ではイギリス羊毛製品輸入・イギリス向け船舶用品輸出を基軸に英露バルト海貿易の興隆を見るものの、他方では特権貿易会社による黒海貿易の開始、南部ステップ黒土地帯における輸出向け商品作物の生産、相手市場としてのフランス・地中海諸国の志向、以上の如きフランス・ロシア黒海貿易の萌芽が確認される。第二にロシア外交政策の動向については、一方ではオーストリア継承戦争(1740-48年)・七年戦争(1756-63年)への参入によってロシアのヨーロッパ国際体系編入を見るものの、他方では英仏両国への軍事支援の交換条件として露土戦争への軍事的・財政的支援が繰り返し要求され、来るべき露土戦争に備えた軍事同盟が着々と整備されつつあったことが確認される。第三に貿易関係と外交関係との結節点をなす通商条約交渉については、1740年代には英露両国の経済的・政治的紐帯を基盤として1742年英露同盟・付帯条項(1734年英露通商条約の更新)が実現したものの、続く1750年代には仏露両国の経済的・政治的関係の高揚を背景として1756年仏露同盟が形成され、英露通商条約の廃棄による仏露通商条約の締結が構想されていることが注目される。総じて、エリザヴェータ女帝時代を通じ、続くエカチェリーナ二世時代に本格化する黒海貿易・南下政策の基盤が整備されていた事実を確認できる。
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Research Products
(1 results)