2007 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦期アルザスにおける強制召集兵の記憶とナショナルヒストリーの考察
Project/Area Number |
17720195
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中本 真生子 Ritsumeikan University, 国際関係学部, 准教授 (80330009)
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Keywords | アルザス / 国民国家 / 強制召集 / 第二次世界大戦 / 記憶 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、第二次世界大戦期の強制召集兵(マルグレ・ヌ)の問題について、U.リドヴェクによるマルグレ・ヌ研究Les Malgre-Nous, Histoire de l'incorporation de force des Alsaciens-Mosellans dans l'armee allemande等を参考にしつつ、1990年代半ばから数多く刊行されている手記、回想録、日記、書簡集等の整理および分析を行った。その中から、特に「帰還者」については、彼らの戦時中の体験は、「フランス人」としては容認されざるもの、また「対独協力者(コラボラトゥール)」に類するものとして戦後、非難あるいは忘却の対象となり、それゆえに「沈黙」を強いられ、それが現在にいたるまでのトラウマと化していることが明らかとなった。その端的なケースとして挙げられるオラドゥール事件とボルドー裁判について、J-J.ヴォノーの研究(VONAU. Jean-Laurent, Le Proces de Bordeux, Strasbourg, 2003.)を中心に、その「記憶」のされ方について考察を行った。またその考察については、オラドゥールとアルザス、それぞれの第二次大戦期の「体験」「記憶」をテーマとして博物館の比較、研究も行った。その結果、1990年ごろを境に、「沈黙」から「語り」へと、第二次世界大戦期のアルザスの「記憶」の扱いが大きく転換したことが判明した。またその「語り」の方向性が、「ナショナルヒストリー」および「国民的記憶」への包摂をその目的としているという特徴が明らかとなった。それらの研究を踏まえた上で、普仏戦争から第二次世界大戦期までと、それらの「記憶」の仕方、され方についてを扱った著書『アルザスと国民国家』を、平成20年1月に出版予定。
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