2005 Fiscal Year Annual Research Report
集落・墓地遺跡の動態からみた古墳時代北部九州における集団間関係の研究
Project/Area Number |
17720202
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻田 淳一郎 九州大学, 大学院人文科学研究院, 講師 (50372751)
|
Keywords | 古墳時代 / 北部九州 / 集団間関係 / GIS / 遺蹟の動態 |
Research Abstract |
本研究は,古墳時代における集落遺跡・古墳等の墓地遺跡の立地や分布について,その通時的な変遷を整理し,両者の成果を統合することにより,地域社会の具体像とその変遷を明らかにすることを目的とする。本年度の課題は大きく2点ある。まず第1に,GISによる分析を実施するために,ハードウェアとソフトウェアの整備を行うことであり,これについてはほぼ完了した。第2の課題として古墳時代遺跡のデータベース化の作業を挙げていたが,本年度はこのうち,福岡県・佐賀県・大分県の前方後円墳・前方後方墳と一部の円墳・方墳について,位置・規模・時期などの基礎的情報に関してデータベース化の作業を実施した。そしてそれをもとに各時期別の分布状況についてGISによる分析を行った結果,前期で古墳築造がほぼ終了する地域,中期以降に新たに出現する地域,後期における前方後円墳の減少などの様相が具体的に明らかになった。特に唐津市から福岡市にかけての玄界灘沿岸地域では,前期古墳の築造は顕著であるが中期古墳が少なく,後期以降の状況も群集墳の出現とあわせて非常に複雑な様相を呈している。また大分県の大野川上流・中流域なども中期後半以降について不明な点が多い。各地の沿岸部・内陸部・平野部といった地理的景観の違いとこうした古墳の動態とは密接に関連していることが窺われる。またこれらの前方後円墳が築造される小地域の範囲や相互の距離なども,各時期・各地域でそれぞれに異なる可能性が見通しとして得られた。次年度は,こうした前方後円墳など以外の群集墳や,さらに集落遺跡についてデータベース化の作業を進めた上で,本年度で明らかにした古墳の動態とこれら群集墳や集落遺跡などの動態がどのように重なるのかといった問題そしてその背景について具体的に検討を進める予定である。
|