2005 Fiscal Year Annual Research Report
折衷土器から見た異文化受容-古墳出現前後の日本と朝鮮半島の土器を基に-
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17720206
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
寺井 誠 (財)大阪市文化財協会, 調査研究部, 学芸員 (60344371)
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Keywords | 考古学 / 朝鮮半島系土器 / 折衷土器 / 楽浪系土器 / 格子タタキ |
Research Abstract |
本年度は計8回の国内資料調査(大阪府1回、奈良県1回、福岡市3回、福岡県志摩町1回、同久留米市1回、大分1回)と、1回の韓国資料調査を実施した。 国内資料調査では、朝鮮半島系土器についての基本的な情報収集に加え、在来土器に朝鮮半島の土器の要素が加えられた折衷土器について重点的に調査を行った。その結果、(1)楽浪系の筒杯を模倣した土器(福岡平野)、(2)朝鮮半島嶺南地方の壺蓋を模倣した土器(大分県)、(3)弥生時代後期中葉の格子タタキが施された畿内第V様式甕(大阪)、というような興味深い資料を確認することができた。この内、(1)については寺井(2006)で示し、(2)と(3)については現在類例を調べて検討中である。特に(3)については朝鮮半島で格子タタキが登場する頃とほぼ同時期であり、朝鮮半島の関係を検討するとともに、それとはまったく関係なく在来で突発的に登場したことも可能性として考えておかなければならない。 韓国では全羅南道咸平郡の昭明遺跡や光州市の新昌洞遺跡の資料を調査した。昭明遺跡では4世紀代の土師器甕を確認した。これは湖南地方では初例と思われ、今後、嶺南地方との対比を進めなければならない。また、新昌洞遺跡では須玖式系土器を観察したが、勒島遺跡で出土しているものと類似しており、おそらく朝鮮半島で模倣されたものが伝播したのであろう。 研究成果の公表では、2005年6月の九州前方後円墳研究会で、「朝鮮半島系土器」というテーマで発表した。また、福岡市や福岡県志摩町において出土した朝鮮半島系土器の報告に協力し、自身の研究成果の一部を還元することができた。
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