2006 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの鉛釉陶器-考古資料にみる鉛釉陶器生産と唐三彩の影響
Project/Area Number |
17720210
|
Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
神野 恵 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (60332194)
|
Keywords | 陶磁器 / 鉛釉陶器 / 唐三彩 / 奈良三彩 / 奈良二彩 / 黄冶窯 / 西大寺 |
Research Abstract |
本年度は奈良文化財研究所の発掘調査で出土した唐三彩、奈良三彩の資料に関する整理とデータベース化をすすめた。今年の発掘調査では西大寺食堂院の井戸SE950や平城宮東院地区の発掘調査で、多くの奈良三彩が出土し、これらの整理作業をすすめた。とくに西大寺食堂院SE950から出土した奈良三彩の椀、奈良二彩杯、盤、包含層から出土した奈良二彩鉢、白釉杯は正倉院に残るセットと似ており、寺院が保管する鉛釉陶器の実態を考えるうえで重要な資料を得た。また、二彩盤の底部片に窯道具の痕跡をもつものを含み、これは西隆寺の調査で出土した二彩盤と似ることから、奈良三彩の焼成技術を考えるうえでも興味深い資料である。また、奈良三彩とともに、猿投窯産とみられる緑釉椀も出土しており、奈良三彩から緑紬へという鉛釉陶器の大きな変化を考えるうえでも重要な資料である。SE950は延暦年間の木簡も出土していることから、これらの資料は西大寺造営から延暦年間という年代幅が確実な資料としても重要である。これらの資料の整理作業および報告書作成に付随して、奈良三彩資料の出土例の整理をすすめた。 また、これまで中国河南省鞏義市の黄冶窯の発掘調査で出土した資料について写真、観察記録を整理した。2006年度は黄冶窯より南の水地河遺跡で窯跡の調査が行われており、ここより出土した唐三彩資料について、写真、観察記録の整理をおこなった。また、今年度は台湾歴史博物館が所蔵する唐三彩の資料を実見した。これらの資料は、河南省より運ばれたものも多く、黄冶窯の産品と思われる資料も含まれていた。
|