2008 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの鉛釉陶器-考古資料にみる鉛釉陶器生産と唐三彩の影響
Project/Area Number |
17720210
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
神野 恵 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 研究員 (60332194)
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Keywords | 陶磁器 / 鉛釉陶器 / 唐三彩 / 奈良三彩 / 大安寺 / 陶枕 |
Research Abstract |
本年度は我が国における三彩陶の生産を考えるうえで重要な大安寺出土の陶枕について、再整理をおこなった。鉛釉陶器の生産は、すでに7世紀代には朝鮮半島の影響を受け、すでに緑釉陶器の生産がはじまっていたことが、飛鳥池遺跡の発掘調査によって明らかになっている。しかし、奈良時代になって盛行する奈良三彩は、器種、意匠や釉色の多彩さなどの点から、中国の唐三彩の影響を強く受けたものである。おそらく遣唐使を介して将来された唐三彩と、それを摸して独自に生産を始めた契機を示す資料として、大安寺出土資料がもつ資料的価値は高い。大安寺からは約200点、50個体にのぼる数の陶枕が出土した。中国国内の生産地、消費地の遺跡においても、これだけの量が出土した例はなく、唐代前期の陶枕を集めた一大コレクションである。明らかに将来された陶材のなかにまじって、器壁が厚く、奈良三彩に似た釉質、釉色を呈するものがあり、これらは唐三彩を模して国内で生産されたものと考えられる。すでに大安寺の陶枕は発掘報告のなかで、報告されているが、これらは火災を受け、表面が焼けただれた資料も多く、文様が明らかでないものが多かった。今回は再整理にあたり、自然科学的分析を取り入れた研究を試みたところ、X線を透過することによって、これまで不明であった文様が浮かびあがってきた。今年度の研究は、この大安寺の陶枕をCR(デジタルX線透過装置)の成果を取り入れ、資料全点の実測を行い、製作技法や意匠から分類を行うとともに、その生産地や国内外の資料と比較検討するための基礎資料となるデータを作成した。
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