2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代韓国における植民地的遺産の資源化と活魚市場の形成に関する研究
Project/Area Number |
17720223
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中野 泰 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 講師 (20323222)
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Keywords | 韓国 / 民俗学 / 漁村 / 活魚市場 / 生活戦略 / 食文化 / 植民地 / 文化資源 |
Research Abstract |
主として、韓国慶尚南道釜山広域市の漁村、及び、東海岸の束草市の漁村において、夏期には平成17年7月28日〜8月17日の計21日間、秋期には平成17年9月29日〜10月9日の計11日間、冬期には平成17年11月17日〜平成18年12月8日の計22日間、都合54日間のフィールドワークを行った。 漁村においては、水産協同組合を中心に、活魚市場の概況と形成史についてインタビューをし、関連資料を入手した。刺身団地においては活魚の売買をめぐる諸慣行を調査し、各戸を訪問、聞き取り調査を遂行した。祖先祭祀などの儀礼に参与し、日常食・儀礼食の調査も行い、漁村の豊漁祭の参与観察も実施した。ソウルの水産市場においても、・市場の概況と形成史についてインタビューをし、比較可能な関連資料を入手した。なお、次年度の調査地の選定のため、西岸の漁村へ短期間の巡検を行った。 以上の調査と資料収集の成果は、現在検討中であるが、その要点は、以下のようにまとめられる。1.釜山における活魚市場の形成は、朝鮮戦争当時の195年代に認められ、1969-1970年に制度化が進められ、現在、高層化された市場へと発展した。2.都市部に位置する市場であるため、祖先祭祀が行われる秋夕や正月に休業するが、近隣の商人は海外観光客の需要にも依拠し、生業の季節変化が顕著でない。3.従来の生活は、非日常時に行われる儀礼が簡素化されるなどの変化を見せている。4.刺身食自体は、植民地時代、漁業者による簡易食の外、家庭食においても既に行われていた。5.刺身食は、日常ではなく、来客時や飲酒時などの非日常的な場に食される傾向がある。 以上から、釜山における活魚市場の形成は、1970年代から始まった東海岸よりも早いものであったこと、東海岸のそれが都市部から来る観光客の休暇のサイクルに適応した経営を行っている反面、釜山では、国内だけでなく、海外観光客にも適応し、通年型の経営を志向していることが確認された。
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