2006 Fiscal Year Annual Research Report
北米先住民社会における生業および特定資源の意義、利用に関する人類学的研究
Project/Area Number |
17720225
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
立川 陽仁 三重大学, 人文学部, 講師 (20397508)
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Keywords | カナダ、北西海岸 / 先住民族 / 水産資源の利用 / サケ漁業 / サケの養殖業 / 生業活動 |
Research Abstract |
本年度は現地での調査とそれによるデータ収集に精力的にとり組んだ年となった。8月からちょうど1ヶ月間実施した、カナダ、B.C.州でのフィールド・ワークにおいて、私は、昨年の成果であるサケ漁業と先住民族の関係についての博士論文に書かれた趣旨について現地でプレゼンテーションを実施してインフォーマントらの意見を聞いたほか、以下の3つのデータ収集をおこなった。第一に、先住民が自給用に捕獲するためのサケ漁の調査およびデータ収集である。私は同調査を2000年にも実施したが、今回はその6年後のサケ漁における変化を追うことを目的としており、とくに捕獲したサケの分配に関する面で、研究上大きな成果があった。第二に、現地に導入されているサケの養殖業の現地調査である。これについても映像資料を中心に、多くの資料を得ることができた。第三に、この養殖業が現地で巻き起こしている社会問題、おもに環境問題について、生物学者たちにインタビュー調査をすることである。これについては調査期間中に面談を申し入れていた生物学者とのインタビューが急遽中止になったりしたこともあって、十分には遂行できなかったが、それでも帰国後にその人物から多大な資料を入手することができた。総じて、本年度の調査は北米先住民の資源利用を知る上で、きわめて有益なデータを得られたものになったと自負している。 そのほか、本年度は3つの論考を発表し、1回の学会発表もおこなった。『季刊民族学』によせた論考は、現地先住民の生活圏に導入されたサケの養殖業を事例に、経済発展と環境保護のイデオロギーの狭間におかれた先住民族の語りを分析したものである。『人文論叢』によせた論考は、カナダの先住民族が商業的なサケ漁業のなかで成功者となった条件の1つである、労働組合の結成について論じたものである。『TRIO』によせたエッセイは、カナダを事例にニート(若年無業者)の問題について言及したものであるが、そのなかでもサケの養殖業の導入が先住民の若者に与えた影響について分析している。なお、3月に東京でおこなった学会発表では、昨年発表したサケ漁業と先住民の関係に関する博士論文の結論を紹介した。
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