2007 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーションによるホロコースト表象の変容に関する博物館人類学的研究
Project/Area Number |
17720235
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
寺田 匡宏 National Museum of Japanese History, 研究部, 外来研究員 (30399266)
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Keywords | ミュージアム / ホロコースト / 再現 / ドイツ / 記念碑 / メモリアル / 歴史表象 / 展示 |
Research Abstract |
この研究の目的は、グローバリゼーションの進展に伴って、ミュージアムにおけるホロコーストの表現にどのような特徴が現れているかを探ることである。とくに、ホロコーストのような「負の記憶」に関しては、「体験型展示」の導入の仕方やどこまで「再現」を行うかに関して、国や施設によって位置づけ方が異なる。これらに関して対照的な考え方を持つドイツ、ポーランド、アメリカにおける各施設の展示技法を実証的に分析することによって、グローバリゼーション下におけるミュージアムでのホロコースト表象の特質を明らかにすることを目的とする。 一昨年度はポーランドで絶滅収容所跡地がミュージアム化した施設を調査し、展示の特徴を抽出した。昨年度は、ドイツにおいて収容所がミュージアム化した事例を調査し、さらに文献調査によってそれを補助するデータを収集した。本年度は、研究のまとめとして、昨年・一昨年に収集したデータを解析し、諸外国の研究成果と対照するとともに、補足調査としてドイツにおける現地調査を行った。 この研究で明らかになったことは、ホロコーストに関するメモリアルや展示はヨーロッパ・アメリカにおいて2000年代に入っても増加しているが、その表現に関しては差異が見られることである。ドイツにおいては共通して再現に関しては慎重な姿勢が見られる。そこには、見学者とホロコースト時との時間的齟齬を顕在化させる姿勢が見られる。一方、アメリカにおいては、再現が積極的に取り入れられている傾向が存在する。見学者とホロコースト時との齟齬を顕在化させることが少ないと言える。ポーランドにおいては、新たに建設された施設では再現に関しては慎重な姿勢が見られるが、一方で見学者の感情に強く働きかけ見学者とホロコースト時との齟齬を顕在化させない側面も見られる。これらの三つの展示のあり方のタイプの併存が現代におけるホロコーストの歴史表象の特色であるといえる。
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