2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会福祉行政における権利保障過程の変容に関する研究
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17730017
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
豊島 明子 三重大学, 人文学部, 助教授 (10293680)
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Keywords | 福祉行政 / 社会福祉 / 介護保険 / 公私協働 / 行政法 / 社会保障 / 生存権 |
Research Abstract |
本研究は、著しく変化する権利保障過程を踏まえ、国民・住民の生存権実現のためにどのような新たな解釈論や立法論の必要があるかを、明らかにしようとするものである。具体的には、国・都道府県・市町村という公的主体のみならず、社会福祉協議会や営利・非営利のサービス事業者等の私的主体の連携・協働が求められる現状において、連携・協働の狭間において生じうる権利侵害の予防的救済や事後救済のあり方を検討しようとするものである。 本年度は、この研究の初年度であるため、上述のような新たな解釈論・立法論の探求のための前提的作業を行った。まず、日本国内における福祉行政の現状把握と、これらの現状を踏まえた理論動向の把握をするため、文献・資料の収集を行った。そして、本研究はドイツの現状との比較研究という方法を用いているため、ドイツの現状把握に必要となる文献・資料の収集等の調査も行った。また、国内で入手可能なドイツの社会保障関係文献や論文などの収集も精力的に行った。これらの作業によって、日独双方において、権利保障過程の変容が一定程度進行していることが分かった。しかしながら、ドイツに比べて日本では、福祉の市場化の進展に応じた公的主体による新たな規制・監督の仕組みの整備が十分ではないことにも気づかされた。福祉の第三者評価や、自治体によっては福祉オンブズマンを導入して実績を積んでいるところも見られるものの、権利侵害の予防的救済や事後救済という点では、きわめて多くの課題を抱えている。地域におけるサービスの適切な配分に役立つはずの「在宅介護支援センター」が地域によっては十分に機能していないにもかかわらず、市町村の福祉担当行政機関は丸投げした状態である地域もあるなど、市町村間の格差も拡大しているように思われる。 これらを踏まえ、次年度は、具体的な公私の連携・協働のあり方について、行政法学において最近論じられ始めている公私協働論も視野に入れつつ、考察を深めたいと考えている。
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