2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730019
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
奥谷 健 島根大学, 法文学部, 助教授 (70335545)
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Keywords | 所得税 / 人的控除 / 配偶者控除 / 扶養控除 / 応能負担原則 / 所得控除 |
Research Abstract |
本研究の成果の一部の公表に向け現在作業を進めている(校正段階)。その内容は次のとおりである。 現在の所得税法は、応能負担原則に基づき、納税者の生存権を保障している。その具体的な現れが基礎控除である。この基礎控除は納税者の最低限度の生活を保障するためのものであり、それには担税力がないと考えられ課税されていない。これと同様の趣旨のもので、納税義務者がその家族を扶養する場合に、その最低生活費分を納税義務者の所得算定においてどのように考慮するか、ということが問題となる。このうち、配偶者の扶養にかかるものを配偶者控除、その他の親族にかかるものを扶養控除という。 これらの扶養にかかる控除を担税力という観点から、基礎控除を税額確定のどの段階で考慮すべきかという点が問題となる。また、配偶者が自身で所得を得ている場合もある。そのような場合には、その所得が一定金額以下であれば、配偶者は自らの基礎控除と納税者における配偶者控除との双方の適用を受けることになる。いわば、二重の控除を受けることになるのである。そのため、これらの制度はどのようなあり方が望ましいのか、これまでの基礎控除をめぐる研究でドイツの議論を参考に、納税者の個人的事情を課税段階で考慮するための原則、主観的純額主義に基づいて検討した。とりわけ今年度の研究については、ドイツ連邦憲法裁判所での最新の違憲判決をもとに、この点を検討した。 またこの主観的純額主義は所得税における担税力の指標である所得概念と密接な関係を有する。とりわけ、本研究の対象である市場所得概念は、この主観的純額主義を明確に採用している。さらに最低生活費に加え、子どもには教育費用などの費用も保障されなければならないという考え方を採用し、従来よりも手厚く生存権を保障していると考えられる。 このようなことから、市場所得概念が日本において担税力に基づき課税対象をとらえた所得概念のあり方について重要な示唆を与えるものであると考えられるため、この点について引き続き研究を進めている。
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Research Products
(1 results)