2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730023
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
中林 暁生 東北学院大学, 法学部, 講師 (70312535)
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Keywords | アメリカ憲法 / 人権 / 立憲主義 / 自由権 |
Research Abstract |
本研究は,現代積極国家における自由権論の在り方を研究することにより,「規制」主体としての政府だけでなく「給付」主体としての政府をも実効的に統御しうる「自由権」論を確立することを目指している.その際に本研究が素材としているのは,すでにこの分野において相当の蓄積のあるアメリカ憲法学である.研究初年度にあたる本年度は,本研究の理論的前提を確立することに努めた。具体的には,以下に挙げる3つの研究を,国内外の資料・文献を収集しながら行った.まず第1に,アメリカにおいて「現代国家」化が進展し始める20世紀初頭に,判例の中で,「給付」主体としての政府がいかなる性格のものとして位置づけられていたかについて,判例の分析を通じて考究した.この点については,これまでの諸研究により大まかなアウトラインは明らかになっていたが,諸判例を詳細に検討することにより,本研究の出発点となる視角が理論的により精緻なものになるよう試みた.この点では一定の成果が得られたが,本研究のさらなる精緻化を図るべく,次年度はさらに深化させる予定である.第2に,20世紀初頭のアメリカ憲法学における「立憲主義(constitutionalism)」理解についての研究を行った.欧米の主要な近代立憲主義の国々の中において,早くから司法審査制を確立してきたアメリカ憲法学の「立憲主義」理解を研究することは,「現代積極国家」を如何に統御しうるかを探求する本研究にとっての基礎的な土台づくりの意味を持っている.第3に,日本の憲法学における人権論の研究を行った.大日本帝国憲法下における「権利」観,当時の違憲審査制理解などから,日本国憲法制定後の学説・判例の展開など,これまでの日本の憲法学における人権論の蓄積を,本研究の視角から捉え直す作業に従事した.
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