2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730042
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
川田 知子 亜細亜大学, 法学部, 准教授 (20365042)
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Keywords | 有期労働契約 / 均等待遇 / 雇止め / フレクシキュリティー / パートタイム・有期労働契約法 |
Research Abstract |
平成18年度の研究実績は下記の通りである: 1.昨年に引き続き、有期労働契約の法的性質及び論理構造を明らかにし、それに対応した労働契約法制のあり方を検討するために、日本における有期労働契約の判例分析及び体系化と、そこから読み取れる有期労働契約法理を解釈学的に理論化する作業を行った。昨年及び今年のこの作業を通じて、有期労働契約の特質と問題点、有期労働契約をめぐる学説の議論状況、並びに労働契約法制の議論状況を明らかにすることができた。 2.また、ドイツ法に関しては、これまでのようにドイツの法制度の研究のみならず、ドイツ法制度の根底にある考え方や最新の立法の動向及びそこでの新たな議論など、幅広い視野から研究することができた。第一に、欧州では効率と公正のバランスを維持した欧州流の福祉国家の発展が雇用の成功をもたらしたとされており、柔軟化(フレキシビリティー)と保障(セキュリティー)を結合した「フレクシキュリティー」の考え方が浸透している。ドイツの法制度も、このような考え方の下、労働法の規制緩和によってパートタイム労働や有期雇用を促進し、労働市場の多様1化を推進して労働力需給調整に寄与する一方で、こうした非正規雇用の拡大が格差の拡大や不当な労働条件の低下に結びつかないよう保障する枠組みとして差別禁止(=均等待遇)政策が推進されてきたという特徴がある。この点は、市場原理主義に基づく競争政策二規制緩和をグローバルスタンダードとする流れの中での労働市場改革と、それによる格差拡大が問題となっている日本にとって非常に有益な示唆を与えるものであるとの考えに至った。第二に、近年のドイツの労働市場改革において、高齢者の有期労働契約に関する規制改革が行われたことにより、ドイツでは高齢者雇用政策と年齢差別の関係が大きな問題となった。有期労働契約の規制緩和という労働市場政策が、差別禁止(=雇用における平等)とどのような関係に立つものなのかについて、この問題を通じて考えるきっかけとなった。 また、平成18年はハンブルグ大学のEva Kocher教授からドイツの有期労働契約の調査・研究のためのアドバイスを受け、ドイツの文献リサーチ及び資料・文献の収集と聞き取り等の調査にあたった。実態調査及び聞き取り調査については、平成19年度に引き続き行う予定である。
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Research Products
(2 results)