2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730043
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深町 晋也 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00335572)
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Keywords | 刑事法学 / 違法・責任 / 主観的違法要素 / 財産犯罪 / 不法領得の意思 |
Research Abstract |
本年度は、主として財産犯罪における主観的犯罪要素の研究を行った。特に、窃盗罪において要求されている主観的犯罪要素としての不法領得の意思についての研究を通じて、盗品等関与罪においても一定の主観的犯罪要素を要求すべきではないかとの結論に至った。 従来、盗品等関与罪においては、追求権説と違法状態維持説の対立があり、近時は追求権説が有力な状況にある。しかし、被害者の下に盗品を返還することに関与する第三者の事例を巡って、追求権説を適用して不可罰とする帰結に疑問が生じており、追求権説自体の正当性が問われかねない状況となっている。 このような状況において、追求権説に立ちつつも、一定の事例を可罰的とする理論構成が模索されなければならないが、追求権の内容を限定することにより、今度は処罰すべきではない事例までも可罰的とされる恐れがある。したがって、追求権の内容を限定する見解に立ちつつも、盗品等関与罪自体の構造に着眼した処罰限定要素を模索しなけれはならない。 このような観点からは、「もっぱら被害者のために盗品返還に関与した」場合を処罰から外すという実質的判断が重要になる。そして、このような実質的判断を基礎付ける要素として、不法領得の意思において要求される「効用享受意思」が重要な機能を果たしうると思われる。 また、本年度は、横領罪における不法領得の意思についても研究を行った。横領罪においては、窃盗罪とは異なり、「占有移転」が必ずしも要求されないため、窃盗罪と同様の不法領得の意思が要求されるわけではないようにも思われるが、そもそも横領罪とはどのような犯罪類型なのか、という点がここでも重要となる。したがって、横領罪目体の構造を明らかにする必要があるのであるが、本年度はその点を確定するには至らなかった。この点は次年度の課題としたい。
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