2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730046
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
金澤 真理 山形大学, 人文学部, 助教授 (10302283)
|
Keywords | 既遂 / 未遂 / 予備 / 結果発生の危険 / 中止未遂 |
Research Abstract |
本研究は、予備、未遂、既遂へと至る犯罪の時系列的発展段階を考察すると共に、各犯罪における法益の侵害構造及び既遂結果発生の危険の発生と消滅とに着目して比較法的視座から犯罪の生成過程に理論的に分析を加えることを目的とする。既遂、未遂、予備なる概念の前提には、犯罪事象の時系列的観察のみならず、特定の犯罪の完成形態を措定し、その実現に向けた統一的な行為の考察がなければならない。1532年のカロリナ刑法典は、未遂が処罰される要件として、犯罪の実行に役立つ外部的行為、悪意及び自己の意思によらない事情による犯罪の未完成を挙げ、未遂の一般概念を示そうとした。この規定様式は、基本的に現代の未遂立法にも継承されている。 昨年度は、日本刑法の制定過程を精査し、旧刑法制定時に多大な影響を与えたフランス、及び未遂理論の形成に欠くべからざる影響を及ぼしたドイツの立法及び学説を比較検討した。その結果、日本の未遂論は、犯罪の結果を発生させることのないよう、当初の行為意思とは逆に、既遂を阻止しようとする意思に基づく中止未遂を未遂概念に含ませるフランス刑法の系譜と結果の不発生そのものを可罰的未遂の要件とするドイツ刑法の構想との双方に影響を受けつつ理論的発展を遂げてきたことが判明した。犯罪構成要件を手がかりとした分析を踏まえると、犯罪の結果不発生への意思的コントロール即ち中止未遂を未遂の概念に含めるか否かに、未遂の理解の分岐点があったと解される。引き続き、未遂の主観的要素を犯罪構成要件との関係において検討し、機能的に考察することを今後の課題とする。
|