2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730050
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩谷 毅 岡山大学, 法学部, 助教授 (60325074)
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Keywords | 刑事法学 / 現代型犯罪 / 財産犯罪 / 被害者 / 自己答責性 |
Research Abstract |
今年度は、詐欺罪との関連で被害者の自己答責性が有する意義を検討した。詐欺罪においては、騙された被害者の側にも、欲を出して甘い話につられたという一定の落ち度がある場合が考えられる。しかしながら、多くの場合は被害者が重要な錯誤に陥るように欺罔者は積極的に働きかけたのであって、事象におけるイニシアチブをどちらがとったのかという観点からは被害者に自己答責性があり行為者を不可罰にできるという場合はほとんどないように思われた。被害者の自己答責性ということは、やはり「単なる被害者の落ち度」というだけで簡単に認められてはならないのである。この被害者の側にも一定の責任があるという話は、行為者の犯罪の成立不成立の点でまず重要性を持つのであるが、行為者の犯罪不成立までは導かないとしてもたとえば量刑事情の中で行為者に有利に働く可能性がないわけではない。しかしながら、そのような被害者側の事情は厳密に言えば「被害者の自己答責性」という概念でもって説明されるべきではなく、単純に「被害者の落ち度」という概念を用いるなどして、精密な理論化が目指されるべきであるように思われた。 また、今年は被害者の自己答責性概念を理論的に深化させるために、この概念の基礎的研究も行った。その成果として、まず平成17年6月に北海道大学で行われた日本刑法学会において、危険引受における被害者の自己答責性について個別報告を行った。また、刑法雑誌第45巻第2号に「被害者の危険引受けについて」と題する論文を公刊した(16頁から30頁)。
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