2007 Fiscal Year Annual Research Report
第三者のためにする契約・再論-他の財産管理および組織制度との比較を中心にして-
Project/Area Number |
17730054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新堂 明子 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00301862)
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Keywords | 第三者のためにする契約 / 契約の相対効 / 契約の対第三者効 / 純粋経済損失 / 移転させられた損失 / 間接損失 |
Research Abstract |
1、第三者のためにする契約法は、他人のためにする保険契約法との比較は当然のこととして、2、信託等の財産管理制度あるいは法人等の組織制度と比較する必要があり、それとともに、3、契約法と不法行為法の交錯する領域にも位置づけられる。平成19年度(最終年度)の研究実績の概要は、つぎのとおりである。 1、債権法改正の動向をふまえ、第三者のためにする契約法の改正についての私案を提示した(平成20年度に公表予定)。現行法では、契約の当事者が第三者のために契約を締結したうえで、第三者が受益の意思を表示しなければ、第三者は権利を取得しないとされているが(民法537条)、私案では、契約の締結だけで、権利を取得するとし、第三者は遡及的に権利を放棄することができるとした。また、現行法では、第三者の受益の意思表示により第三者の権利が発生した後は、契約の当事者は第三者の権利を変更しまたは消滅させることができないとされているが(民法538条)、私案では、第三者の権利確保の意思通知の後は、それができないとした。私案を提示するために、現在進行中の保険法改正の動向を網羅的に検討した。 2、3の考察を進めたために、2の考察が進まなかった。当初は、本研究課題の副題にもあるとおり、3よりも2のほうを重点的に研究する予定であったので、本研究期間終了後も、こちらの研究を進めていきたい。唯一、上記の第三者のためにする契約法の改正についての私案を提示するために、改正信託法の内容を網羅的に検討した。 3、第三者のためにする契約と、不法行為に基づいては賠償が否定される「純粋経済損失」の問題との交錯を検討した(なお、後者の問題については、日本法はこれを否定しないが、独・英法はこれを否定する)。後者の問題のうち、とくに「移転させられた損失」の問題を検討し、現在、論文を発表中である。
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