2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730055
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 哲生 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (80230572)
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Keywords | 保険 |
Research Abstract |
故意の内容と結果が異なった場合、未必の故意の問題につき、日本の判例・学説の分析を行った結果、議論の状況は対立したままで膠着状態にあるといえそうであるが、対立の根本は故意免責の趣旨の理解であるとの結論を得た。すなわち、信義則に基づいた理解では行為者の主観的態様を重視することが自然であるのに対し、故意の事故招致は異常な危険であるというような視点からすれば、行為者の主観的態様よりも行為の客観的な危険性、事故発生の蓋然性を重視することが自然となる。そこで、後者の視点からの検討を行うこととした。 イギリスでは、故意免責が認められているが、これは基本的には公序の問題ではなく、保険者の引受上の問題であるとの理解が一般的である。すなわち、故意の事故招致が起こるかどうかは被保険者の意思に完全に委ねられているから事故発生の予測が不可能であり、保険者は引き受けないということである。さらに、イギリスでは、認められているのは故意免責であり、重過失免責については一般的には特に認められていない。しかし、故意について客観的に理解するか、主観的に理解するかという議論があり、客観的に理解することが多数の認めるところである。故意を客観的に理解するということは、故意に該当するかどうかの限界線上にあるケースは、結果的には、日本では重過失免責の問題に該当することになる。 次に、イギリスにおいて故意の内容と結果が食い違った場合の処理であるが、それほど多くの判例はないが、興味深い判例もある。そこでは、故意の行為と結果の因果関係の問題であることが示唆されるような表現がある。つまり、故意行為の結果と評価するだけの関係があるかどうかである。問題は、この因果関係をどのような内容のものとして位置づけることが適切かということではなかろうか。
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Research Products
(2 results)