2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730059
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三枝 健治 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (80287929)
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Keywords | 約款 / 情報化 / 開示 |
Research Abstract |
例えば規約全文をそのまま又は別リンクを張る形でサイト上に記載するBrowse-wrap契約のような、紙媒体でなく電子媒体に条項が記載される「取引の情報化」が見られる今日、従来の約款論がこの「取引の情報化」の影響をいかに受けているのか、あるいは受けていないのか、その検証をなすことが本研究の課題である。 この課題の探求のために、本年度は、アメリカ法での議論、より具体的には、オンライン取引やネット取引の問題に新たに自覚的に取り組む改正UCC第二編及びUCITAの各立法作業での議論に着目し、その正確なフォローを試みた-なお、その研究成果の一部が、拙稿「UCC第二編改正作業における約款の『採用』規制の試み(一)〜『内容』規制との関係を念頭に」「同(二)」「同(三)」(法政理論37巻3・4号80-142頁<2005年3月>、28巻3号14-60頁<2006年2月>、巻4号予定<2006年3月予定>)において公表済みないし公表予定である。 それにより判明したのは、約款規制のうち、(1)採用規制がかつては重視されていたものの、非良心性法理の導入によって条項内容の不当性を直接理由に契約に介入する途が開かれたことで、(2)内容規制へ規制の重点がシフトするに至り、近時、かかる(2)重視の従来の傾向をめぐって議論が深められている、ということであった。特に議論の焦点は、オンライン取引やネット取引に典型的に現れる「事後条項(later terms)」の拘束力にあり、一方で手続的公正の観点から、(1)採用規制の等閑視につながるとして、事前の約款開示を伴わない事後条項の拘束力を否定する見解が存在し、他方で効率性の観点から、専ら(2)内容規制で対処可能であるとして、条項の内容が公正である限り事前の約款開示を伴わない事後条項の拘東力をも肯定する見解が存在していた。このような両見解の対立は、「取引の情報化」を契機に、(1)採用規制が(2)内容規制との関係で持つ固有の意義が何かを再び問いかけるもので、本年度の研究を通じて、その点の更なる検討の必要性が明らかとなった。
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